リベラルアーツ&マイノリティー
Online ISSN : 2759-291X
手話脚本による健康情報の動画制作の可能性と課題
―参加型エスノグラフィーに基づく手話動画制作プロトコルの探索的検討―
高山 亨太
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2026 年 3 巻 p. 59-86

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抄録
本研究は、ろう者を対象とした健康情報動画制作において、手話脚本を起点とする制作モデルおよびプロトコルの可能性と課題を明らかにすることを目的とする。参与観察の対象は、国立がん研究センターによるろう者を対象にした糖尿病の啓発手話動画の制作過程であり、2021年12月から2025年3月までの参与観察記録、会議録画、脚本資料、医療監修資料等を分析対象とした。研究方法として参加型エスノグラフィーを採用し、制作実践の内部から意味構築過程を記述・分析した。分析の結果、第一に、手話を意味設計の一次言語とすることで、全体枠組みの先行提示、空間配置による因果関係の可視化、非手指動作を含む多層的意味構造といった視覚モダリティ特有の設計原理が体系化されることが確認された。第二に、日本語資料の逆翻訳工程および医療監修との調整過程において、制度的承認が日本語文書を基準として行われる構造が顕在化し、言語間の非対称な権力配置が制作過程に影響を及ぼしていることが明らかとなった。第三に、撮影・編集工程は単なる仕上げ工程(ポストプロダクション)ではなく、言語設計と不可分の映像設計過程であることが示された。以上の結果は、手話脚本起点モデルが単なる翻訳技法の改良ではなく、知識生成における言語的主導権の再配置を伴う認識論的実践であることを示唆する。同時に、逆翻訳負担、手話可能な専門職の不足、制度的承認構造といった課題が持続的実装の制約として存在する。本研究は、健康情報提供における言語設計の再考を促すとともに、ろう認識論に基づく情報制作モデルの理論的基盤を提示するものである。
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© 2026 視覚聴覚障害アドボカシー研究所
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