La mer
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西部北太平洋亜寒帯域表層および中層における溶存銅の付加
谷田 巖武田 重信佐藤 光秀 古谷 研
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2015 年 53 巻 1-2 号 p. 1-18

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抄録

西部北太平洋における溶存銅濃度の分布を支配する要因を明らかにするため、亜寒帯域およぴ熱帯域の2測点で溶存銅の鉛直分布を調べた。亜寒帯域および熱帯域測点のそれぞれ400-3000mおよび300-2000m層で溶存銅とケイ酸の相関が見られ(値 < 0.05)、 珪藻の銅鉛直輸送における重要性が示唆された。本研究亜寒帯域測点における1500m以浅の溶存銅濃度は熱帯域測点と比較し1.3-2.7倍高く、北太平洋の既存知見と比較して0-1500mにおいて0.97-2.60nM高かった。この要因として、表層では表面付近の低塩分水塊中で高濃度であったことから東カムチャッカ海流由来の沿岸水の水乎輸送による供給が示唆された。西部北太平洋でエアロゾル沈着の高い海域における既存知見との比較から、エアロゾルによる供給は本研究亜寒帯域における溶存銅濃度上昇の主要因ではないと考えられた。また、表層以深から1500mまでは表層からの生物ポンプによる輸送および1500mにおける水平輸送による供給が示唆された。2000m以深では亜寒帯測点と既存知見で溶存銅濃度はほぼ同じレベルであった。これらの結果から、西部北太平洋亜寒帯域において沿岸水や陸棚からの銅の水平輸送が、生物生産や銅の空間分布に重要な影響を及ぼしていると考えられた。

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© 2015 日仏海洋学会
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