抄録
本研究では、食料消費に関わる灌漑用水消費に焦点を当て、水ストレス指標により、世界全体の淡水資源需給バランスに対する国際貿易の影響を評価した。淡水資源消費量については、ウォーター・フットプリントにより、各国の国内生産による淡水資源の直接消費量と、当該国の他国からの国際貿易に伴う淡水資源の間接消費量に分けて評価した。さらに、灌漑効率を用いて、淡水資源消費量を淡水資源取水量に換算した。淡水資源利用可能量は、農業において最大限利用可能な淡水資源量として定義した。2010年時点において、41ヶ国が高いストレス(28ヶ国、19億人)または中位のストレス(13ヶ国、18億人)に直面している可能性が示唆された。このうち8ヶ国では、他国への食料輸出により水ストレスが強まっている可能性が示唆された。Thailandの場合、輸出向け食料の生産に要する同国の灌漑用水取水量の86%(26.7km3)を占める米の輸出によって、同国の水ストレスが強められている可能性が示唆された。