日本LCA学会誌
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持続可能な開発目標に向けた電子機器の使用年数の把握と傾向分析
山末 英嗣光斎 翔貴ジョルディ クラビオット安永 玲華デュック クワン グエン梅田 靖
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2018 年 14 巻 1 号 p. 77-84

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抄録

本稿では主に東南アジア地域を中心とし、筆者らが電気電子機器の保有状況および使用年数について調査してきた結果について報告を行った。調査はテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、PC、携帯電話を中心とする電気電子機器に対して行った。調査方法はベトナムを対象としたアンケート調査 (2006年、2013年) で世帯当たりの保有台数、中古製品の保有割合、そして所有機器の使用年数を調べた。また、ベトナムに限らず可能な限り多くの国々における電気電子機器の使用年数を文献調査に基づいて収集した。ベトナムのハノイ市とホーチミン市では、2013年における4家電製品の世帯当たりの平均保有台数は2006年における最高収入世帯層と同程度に高いことが分かった。また、中古製品の保有率 (新製品と中古製品の保有台数合計に対する中古製品の割合) は2006年のハノイではおよそ50%であった一方、2013年は両都市において2.5~17.3%程度であった。またハノイ市の方がホーチミン市より中古製品の保有割合が低い傾向にあった。さらに電気電子機器の使用年数分布をワイブル分布を仮定して見積もった結果、2013年において得られた平均使用年数は2006年に比べ大幅に減少していることが分かった。次に、種々の国々について平均使用年数と1人当たりのGDP (購買力平価) の関係を調べた結果、冷蔵庫、洗濯機、エアコンについては1人当たりのGDP (購買力平価) が増加するとともに平均使用年数は下がるが、それがある閾値を超えると使用年数は増加に転じるU字状の傾向が見られた。一方、テレビ、PC、携帯電話については製品の平均使用年数と1人当たりのGDP (購買力平価) に強い相関は見られなかった。最後にU字状の傾向が見られるメカニズム、そしてそのような傾向の差異の要因について考察を行った。

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