日本LCA学会誌
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解説
リスクを巡る意思決定とレギュラトリーサイエンス
岸本 充生
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2018 年 14 巻 4 号 p. 277-283

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抄録

何か事故や事件が起きてから、再発防止という名目で社会の多大なリソースが費やされることが多い。すなわち、実際に起きたことに注目が集まりすぎ、次に何が起こりそうかにはあまり注意が払われない。本解説の目的は、社会が直面する多様なリスクに対して、リスクレベルに基づいて優先順位を付けて、社会全体のリスクを最小にするように予防的に対処するために必要な考え方やツールをまとめて示すことである。そのためにはまず、安全を「許容できないリスクがないこと」と定義する。この定義に基づけば、伝統的な科学だけで安全を定義することはできないことが容易に理解できる。安全であることを示すためには、伝統的な科学と政策の間のギャップを埋めるレギュラトリーサイエンスを発展させることが必要不可欠である。そして政策を決めるためには、複数のオプションを、各種インパクトアセスメント(影響評価)を用いて評価する必要がある。代表的なものとして規制影響評価とプライバシー影響評価を挙げた。これらの考え方やツールは、意思決定プロセスに効果的に組み込まれる必要がある。

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