アジアのメガシティーは気候変動のみならずヒートアイランド現象によっても気温が上昇すると考えられる。そのため、暑熱健康被害を軽減する効果的な適応策が重要となってきている。本研究は、インドネシアの首都ジャカルタを対象に、室外機からの排熱に伴う気温上昇による悪影響や気温の年々変動による不確実性を考慮して、エアコンによる暑熱健康被害軽減効果をDALYを用いて評価することを目的とした。評価する健康被害は睡眠困難および疲労とした。エアコン使用率を向上させることにより、平温年の8月における1人1か月間あたりのDALYは、睡眠困難で2.48 × 10-4年、疲労で1.43×10-5年、計2.62×10-4年軽減した。これは現状の被害の29.8%減であった。気温の年々変動が被害軽減効果に与える影響は大きくなく、最大で7.94×10-5年であった。当地の気温や皮膚温度感受性の季節変化が小さいことを踏まえると、エアコンは通年にわたって効果的な適応策の一つとして位置づけられる。