日本LCA学会誌
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15 巻, 1 号
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目次
新春巻頭言
特集1「第13回日本LCA学会研究発表会からの投稿」
研究論文
  • 桑山 忠弘, 山口 和貴, 岡田 和樹, 亀卦川 幸浩, 神田 学, Alvin Christopher Galangc Varquez, ...
    2019 年 15 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    アジアのメガシティーは気候変動のみならずヒートアイランド現象によっても気温が上昇すると考えられる。そのため、暑熱健康被害を軽減する効果的な適応策が重要となってきている。本研究は、インドネシアの首都ジャカルタを対象に、室外機からの排熱に伴う気温上昇による悪影響や気温の年々変動による不確実性を考慮して、エアコンによる暑熱健康被害軽減効果をDALYを用いて評価することを目的とした。評価する健康被害は睡眠困難および疲労とした。エアコン使用率を向上させることにより、平温年の8月における1人1か月間あたりのDALYは、睡眠困難で2.48 × 10-4年、疲労で1.43×10-5年、計2.62×10-4年軽減した。これは現状の被害の29.8%減であった。気温の年々変動が被害軽減効果に与える影響は大きくなく、最大で7.94×10-5年であった。当地の気温や皮膚温度感受性の季節変化が小さいことを踏まえると、エアコンは通年にわたって効果的な適応策の一つとして位置づけられる。

特集2「環境ホットスポット分析と環境ラベル」
解説
  • 伊坪 徳宏, 田原 聖隆, 近藤 康之
    2019 年 15 巻 1 号 p. 10-21
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    環境配慮設計を生産者が迅速に実施し、エコプロダクツを早期に社会に普及していくためには、マルチステイクホルダーが共有できる環境影響の評価結果が求められる。その結果は科学的なアプローチに基づき、かつ、包括的な視点から得られたものであることが望ましい。著者らは、主に日本製品を対象とした最新のインベントリデータベースIDEA2、静脈を含む環境負荷量を包括的に分析する廃棄物産業連関表(WIO)、日本の環境影響を統合化まで実施するLIME2を駆使して環境ホットスポット分析手法を開発した。100製品に及ぶ評価結果は、LCA関係者によるグリーンイノベーションのための方針策定のための基礎資料として広く活用されることを想定し、環境ラベルタイプ1、タイプ3への利用可能性について検証した。環境ホットスポット分析手法と結果は環境ラベルの信頼性を高めるべく社会実装されるとともに、合理的な審査基準の下で調達品目の選択に活用されることが期待される。

  • 田原 聖隆
    2019 年 15 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    環境ホットスポット分析は、製品やサービスの環境評価における重要な要素を抽出するツールとして注目を集めている。また、気候変動(カーボンフットプリント)だけではなく、他の環境影響領域を考慮したマルチクライテリア分析の重要性も増加してきている。それらの分析には、インベントリデータが必要不可欠であるが、我が国最大のデータベースIDEAでも不足する基本フローが存在し、十分な分析ができない。そこで本研究では、17の影響領域(地球温暖化、オゾン層破壊、水資源消費、土地利用、大気汚染、光化学オキシダント、酸性化、富栄養化、騒音、森林資源消費、化石燃料消費、鉱物資源消費、廃棄物、人間毒性、生態毒性、室内空気質汚染、電離放射線)を評価できる環境ホットスポット分析を日本で実施するための環境を整えることを目的とした。統計などを中心にIDEAの各単位プロセスに影響領域に関係する基本フローを拡充し、マルチクライテリア分析に対応できるようにした。また、環境ホットスポット分析用にIDEAの1895の単位プロセスの直接入出力(投入、排出)している基本フローを用いて、産業連関表および廃棄物産業連関表と統合させ環境ホットスポット分析用データベースを構築した。本稿では、データベース構築手法の概要を解説する。これにより、グリーン購入等の施策への展開などが支援できるものと考える。

  • 近藤 康之
    2019 年 15 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    本稿は廃棄物産業連関表(WIO表)の概要を解説し、日本におけるホットスポット分析と地域経済・環境分析への応用のために推計した平成23年(2011年)WIO表について、とくに従前の方法とは異なる推計方法を採用して改善した点を中心に紹介する。また、推計方法の改善において重要な役割を果たした行政報告データの活用についても述べる。

  • 佐野 裕隆
    2019 年 15 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    本解説は、ISO14024で規定されるタイプⅠ環境ラベルであるエコマークにおけるホットスポット分析手法の活用と展開について報告する。エコマークは、日本における環境ラベルとして1989年に認証事業を開始し、今年度30 年を迎える。認証にあたって、1996年より事業実施要領を改定し、当時新たに規格化されたISO14020及びISO14024に準じて、商品のライフサイクルを通して環境への影響を総合的に評価する仕組を導入している。この商品ライフサイクルを通じて総合的に環境への影響を評価する手法は、ホットスポット分析手法の考え方との共通性が多く、エコマーク認定基準の策定において、基準の科学的根拠を強化することを目的に、ホットスポット分析手法を活用し展開することに関して考察した。

  • 神崎 昌之
    2019 年 15 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は多様な環境側面への取組についての情報を整理し、タイプⅢ環境宣言におけるホットスポット分析の活用方法、および、タイプⅢ環境宣言の在り方を検討することである。自然資本連合、欧州委員会環境フットプリント、UNEP/SETACライフサイクルイニシアチブのホットスポット分析に関するプロジェクト、各種民間スキームなどの動向を見ると、製品等の多様な環境側面の評価スキームとしては企業の独自性と共通ルールの在り方のバランスが重要であること、その中でタイプⅢ環境宣言は環境側面の取組に対する定量指標(KPI)としての位置づけとして活用され得ることが示唆された。

一般投稿
研究論文
  • 吉村 彰大, 松野 泰也
    2019 年 15 巻 1 号 p. 54-69
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    鉄道は環境負荷の小さい交通機関であり、低炭素社会の構築に重要でありながら、近年は赤字路線の廃止と他輸送機関への代替が続いている。近年、費用便益分析が鉄道存廃の判断基準に用いられているが、鉄道の廃止に伴う周辺道路への影響や交通権の保障などの観点から、費用便益分析のみを判断基準とするのは好ましくない。そのため本研究では、鉄道路線の廃止が並行道路に与える影響の評価と、それに伴う経済的 / 環境的負担の比較、検討を通じて、路線が持つ社会的な存在意義の評価に新たな切り口を提供することを目的とした。具体的には、鉄道の存廃による並行道路の混雑変化への影響と、CO2排出量変化を評価した。さらに、路線の赤字と廃止によって必要となる道路改良費を比較した。対象は、既に廃止された2路線と、経営安定性の低い13路線とした。その結果、廃止された2路線では、利用者の80%が自動車利用に転換しても道路混雑は悪化しないと推計され、実際の道路状況とよく一致した。現存する13路線では、7路線が廃止によって並行道路の混雑を悪化させると予測され、うち6路線では大幅な悪化が予想された。この6路線では、鉄道の赤字額が周辺道路の道路改良費を下回ったことから、路線の維持がより合理的であることが示唆された。CO2排出量では、利用者数の最も少ない阿佐海岸鉄道を除いて鉄道の運行によって軽減できていると推計された。この結果から、鉄道の運行によってCO2排出量を削減するためには、一定以上の利用が必要であるという既存研究と同様の結果が確認された一方、排出量の削減効果と経営安定性との相関は、混雑変化と経営安定性に比べ弱いことが示唆された。本研究を通じ、並行道路の混雑変化と財政負担、CO2排出量変化を個々に比較、検討することが、地方鉄道の社会的な存在意義を評価する新たな切り口となることが示唆された。

  • 原 卓也
    2019 年 15 巻 1 号 p. 70-85
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は、ストックとフローのデータから製品の寿命分布統計量(具体的には平均製品年齢や平均使用年数)の時間変化を推定する簡易手法を提案することである。提案手法により推定される平均製品年齢は、与えられたストック・フローの時系列データと整合的なもののなかで最小という性質を持ち、これは真値の下限を保証するものとなる。また推定結果は、販売台数データの期間に影響されないという性質も持つ。本論文では、仮想的なデータおよび日本の乗用車・貨物車のデータを用いた検証により、既往研究の手法とも比較した上で、提案手法が各種寿命分布統計量の推定に有用な情報を提供する手法であることを示す。

事例論文
  • 小原 聡, 菊池 康紀, 大内田 弘太朗, 杉本 明, 服部 太一朗, 安原 貴臣, 福島 康裕
    2019 年 15 巻 1 号 p. 86-100
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/25
    ジャーナル フリー

    本論文では、エタノール生産プロセスが現状導入されていない製糖システムに 2 つの砂糖・エタノール・電力複合生産システム:(1)糖蜜発酵を追加する従来型複合生産システム、(2)サトウキビ品種とプロセスを変更する逆転型複合生産システムを導入した場合の各製品の温室効果ガス(GHG)の累積排出原単位(Cradle-to-gate)、ライフサイクル全体からのGHG排出量(Cradle-to-grave)を定量化し、比較評価することを目的とした。その結果、従来型複合生産システムを導入するケースでは、糖蜜からエタノールへの製品変更と売電量減少により、ライフサイクルにおける原料生産から製品生産までのGHG排出量が現状比 1.3% 増加する一方でライフサイクル全体では0.72 t-CO2-eq./(ha・year)のGHG排出削減ポテンシャルがあることが分かった。逆転型複合生産システムを導入するケースでは、年次変動はあるものの、砂糖、エタノール、電力の全てを同時に増産でき、ライフサイクルにおける原料生産から製品生産までのGHG排出量が現状比 16.7%増加する一方で、ライフサイクル全体では1.49 t-CO2-eq./(ha・year)のGHG排出削減ポテンシャルがあることが分かった。また感度解析により、エタノールや電力の累積製造GHG排出原単位は各製品への排出量の配分比率の変化に対して感度が高く、逆転型複合生産システムの排出削減ポテンシャルは原料データの年次毎のばらつきに対して感度が高いことが示された。結果の妥当性を検証した結果、既往研究で報告されたサトウキビ、砂糖生産におけるGHG排出原単位と本論文の結果の数値の差異を前提条件の差異により半定量的に説明できるため、既往研究との整合性を確認できた。モデル地域における逆転型複合生産システムの生産面・GHG排出量の面での優位性が定量的に示された。

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