2019 年 15 巻 4 号 p. 343-359
日本はエネルギー資源の過度な海外依存や、再生可能資源由来エネルギーの導入の遅れなど、解決すべき 課題に直面している。これらへの対応として、更なる技術開発ならびにシステム改革・導入に加え、環境や経済的側面を考慮したエネルギーの選択が消費者に対し期待されており、その実現のためには個々人のエネルギーリテラシーの向上が必須といえる。一方、エネルギー関連技術やシステムの革新と再生可能エネルギーへの変遷により、必要とされるエネルギーに関する知識は益々複雑化しており、市民のエネルギーリテラシーを向上させる効果的な手法を開発していくことが重要である。本研究では、将来のエネルギーの選択者である高校生に着目し、エネルギーの経験学習がエネルギーリテラシー、および、エネルギー選択の基礎となる選好性にどのような影響を及ぼすのかについて、定量的に分析を行うことを目的とする。鹿児島県立種子島高等学校の生徒を事例対象とし、エネルギーリテラシーを「知識」、「積極性」、「省エネ行動」の 3 つの観点から測定した。選好性の分析には選択型実験を用いることで、電力プランの意思決定に影響を与えうる要因の支払意思額を推計した。経験学習はエネルギーリテラシーの「知識」の向上には貢献したが、「積極性」、「省エネ行動」、および、選好性には有意な影響を与えなかったことが明らかとなった。