2022 年 18 巻 1 号 p. 36-42
2050 年までの脱炭素社会の実現のため、削減努力を行ってもなお残った排出量をオフセットするには二酸化炭素除去(CDR)技術が必要不可欠である。バイオマスから変換したバイオ炭は、低コストかつ十分な規模で行える CDR 技術の一つである。バイオ炭の農業利用は土壌炭素貯留とともに、土壌改良や生産性向上など持続的な農業基盤維持に好ましい効果が期待できる。2019 年 IPCC 改良ガイドラインにはバイオ炭の土壌炭素貯留推計の算定法が新規追加され、日本はいち早くバイオ炭をインベントリ報告、クレジット認証できる J −クレジット方法論を整備した。ここではバイオ炭による土壌炭素貯留の算定法、および農業利用における国内外の研究動向について概説し、脱炭素におけるバイオ炭の役割について展望を述べる。