日本LCA学会誌
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研究資料
日本国におけるカーボンオフセットクレジットの発行による天然ガス廃止坑井坑封鎖の可能性
富樫 親
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2024 年 20 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

この研究は、米国のカーボン・クレジット認証機関による放置された廃止石油坑井からの温室効果ガス(GHG)削減プロジェクトについて、日本においての応用の可能性を検証するものである。このプロジェクトは、経営破綻により保安義務者が存在せず、これまで公的な負担により解決してきた問題をカーボン・クレジットの発行により新たに事業化し、民間の力で解決しようとするものである。廃止坑井の GHG は、ライフサイクルアセスメント(LCA)のターゲットのうち、資源採取の中に潜在していた問題であり、化石燃料から再生エネルギー転換が進む中でより拡大する問題でもある。

 プロジェクトに認証が与えられることにより、坑井からの温室効果ガスの測定方法や封鎖方法の標準化が図られるほか、長期的なモニタリングを義務付けることにより、環境配慮の向上が期待される。

 日本国内の廃鉱された秋田県の黒川鉱山(油田)からの GHG 削減への応用については、廃鉱からの GHG が日本国温室効果ガスインベントリに計上されていないことや、廃鉱後の保安管理が法的に未整備な部分など種々の課題がある。しかしながら、クレジット発行を試みることは、温室効果ガス削減の見える化に大きく貢献し、長期的なモニタリングなどによる事業の品質向上が可能となる。更には、地域で創出したカーボン・クレジットを地域の企業が購入し、カーボンオフセットすることは、地域循環共生圏の形成の一つのツールとして期待できるものである。

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