日本LCA学会誌
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20 巻, 1 号
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目次
新春巻頭言
一般投稿
総説
  • 鈴木 太一, 醍醐 市朗
    2024 年 20 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー

    製品のサプライチェーンを通じて得られた情報を元にした環境主張に対し、CoC(Chain of Custody、一連の管理)モデルが整備されてきている。CoC は、1970 年代から農作物の持続可能性を主な対象として適用されてきた。近年では、化学製品を中心とした工業材料の環境主張を対象に CoC のうちマスバランスモデルの適用が進んでいる。ただし、多くの工業材料ではマスバランスモデルの実装に際し課題が存在する。マスバランスモデルは、その解釈として材料や製品に含まれる固有の特性を任意に割り当てることができる。こうした主張が特に環境主張においては誇大であるとの指摘もあり、適正な主張のために、マスバランスモデルの適用に際してその対象が満たすべき要件を明確に定める必要がある。マスバランスモデルでは、適用対象のシステムを定めて入出力を特定する。しかし、既存の定義では対象となる個別の材料や製品に応じたシステムが一意ではなく、システムに応じた固有の特性の定量化および配分手法も画一的なものがない。また、化学製品以外の多くの工業材料では主張の方法が個別の製造事業者の裁量に委ねられており、統一的な評価手法や認証スキームを用意し、これに則った主張を行うことが望ましい。加えて、現状の定義では入力と出力の関連性の点でマスバランスモデルと B&C モデル(book and claim model)の区別が曖昧であり、両モデルの使い分けについて議論が必要である。マスバランスモデルの適用条件と適格性を定めた上で、工業材料に適用可能な統一的なマスバランスモデルの手法論の確立が望まれる。

研究資料
  • 富樫 親
    2024 年 20 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー

    この研究は、米国のカーボン・クレジット認証機関による放置された廃止石油坑井からの温室効果ガス(GHG)削減プロジェクトについて、日本においての応用の可能性を検証するものである。このプロジェクトは、経営破綻により保安義務者が存在せず、これまで公的な負担により解決してきた問題をカーボン・クレジットの発行により新たに事業化し、民間の力で解決しようとするものである。廃止坑井の GHG は、ライフサイクルアセスメント(LCA)のターゲットのうち、資源採取の中に潜在していた問題であり、化石燃料から再生エネルギー転換が進む中でより拡大する問題でもある。

     プロジェクトに認証が与えられることにより、坑井からの温室効果ガスの測定方法や封鎖方法の標準化が図られるほか、長期的なモニタリングを義務付けることにより、環境配慮の向上が期待される。

     日本国内の廃鉱された秋田県の黒川鉱山(油田)からの GHG 削減への応用については、廃鉱からの GHG が日本国温室効果ガスインベントリに計上されていないことや、廃鉱後の保安管理が法的に未整備な部分など種々の課題がある。しかしながら、クレジット発行を試みることは、温室効果ガス削減の見える化に大きく貢献し、長期的なモニタリングなどによる事業の品質向上が可能となる。更には、地域で創出したカーボン・クレジットを地域の企業が購入し、カーボンオフセットすることは、地域循環共生圏の形成の一つのツールとして期待できるものである。

学会員の研究活動
解説
  • 橋本 征二, 近藤 康之, 粟生木 千佳, 谷川 寛樹, 高木 重定, 中西 翔太郎, 谷口 友莉
    2024 年 20 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー

    本稿は、環境研究総合推進費(JPMEERF20193002)による研究成果の概要を報告するものである。当該研究では、第 1 に、物質ライフサイクルの 6 つの断面(環境からの資源投入、生産工程への原材料投入、生産工程での原材料利用、製品の使用、使用済み製品の処理、環境への廃物廃棄)に基づいて物質フロー・ストックの指標群を提案した。主要な素材について物質フローデータベースを構築し、主要な指標を適用してその有用性を示した。第 2 に、環境・経済・社会に対する統合的な取組を評価する手法を開発した。産業連関分析に基づく手法については、これを主要な資源循環の取組に適用し、その有用性を示した。また、「循環型社会ビジネスの市場規模」指標について、新たな対象事業とその分類を提案し、推計例を示した。第 3 に、ヨーロッパの主要国で使用されている循環経済の指標をレビューし、指標のデータベースを提供するとともに、国際比較可能性の向上に向けた検討を行った。指標のデータベースには、その定義、計算方法、必要なデータが含まれる。また、日本と欧州における主要な指標の定義の違いを検証し、比較可能性を高めるために必要な措置を提案した。

諸報
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各種ご案内(行事案内、原稿募集のお知らせ、特集テーマの公募のお知らせ、第19回日本LCA学会研究発表会開催案内)
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