2025 年 21 巻 1 号 p. 10-15
我が国は、肥料や飼料といった農業生産・家畜生産に必要な資材や飼料のほとんどを海外からの輸入に頼っている。肥料原料や飼料は常に輸入可能であることが前提で日本の農畜産業は成り立っていたが、2020 年から国際情勢の変化や資源保有国の状況により肥料原料価格は高騰した。2008 年のリン危機の際はリンのみが高騰したのに対し、今回は、全ての肥料原料価格が高騰したことが根本的に異なっていた。2024 年現在、これらの価格高騰は落ち着きを見せているが高止まりしている状況にある。飼料に目を向けてみると、我が国の畜産は濃厚飼料の約 80%を海外に頼っている状況にある。
家畜排せつ物中には肥料となる成分が含まれている。年間 8000 万トンの家畜排せつ物を有する我が国は、肥料資源を潤沢に持っているとも考えられる。これも海外の飼料に由来したものである。
一部の畜産農家では耕種農家と連携して家畜ふん堆肥を飼料作物生産に用いて地域循環を図っている。こうした事例から、地域内で資源を循環させることが、農畜産業の持続可能性には必要であることがうかがえる。我が国の食料を全て国内で調達することは不可能だが、地域資源循環を地道に進めていくことが、食料安全保障上では重要だと考えられる。