日本LCA学会誌
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目次
新春巻頭言
巻頭言
特集「畜産DX の現状と今後の期待」
解説
  • 土肥 宏志
    2025 年 21 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/11
    ジャーナル フリー

    本稿では、日本における畜産デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための技術(畜産 DX技術)の動向について報告する。畜産 DX 技術は、スマート畜舎による環境制御、搾乳ロボットや自動給餌ロボットによる作業の自動化、センサによる発情や分娩時期の予測及び群管理による営農支援システムなど、多岐にわたる。さらに、家畜の遠隔診療を支援する DX 技術の普及や、金融機関による牛を担保とした動産担保融資(ABL)を支援する DX 技術の開発・導入が始まっている。また、畜産 DX 技術は畜産部門の特有の問題であるアニマルウェルフェアや環境負荷の低減に貢献する技術でもある。今後は、データサイエンスや人工知能(AI)などを活用した、ソフト面でのデータ駆動型の畜産 DX 技術の開発が期待される。

  • 田島 清
    2025 年 21 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/11
    ジャーナル フリー

    我が国は、肥料や飼料といった農業生産・家畜生産に必要な資材や飼料のほとんどを海外からの輸入に頼っている。肥料原料や飼料は常に輸入可能であることが前提で日本の農畜産業は成り立っていたが、2020 年から国際情勢の変化や資源保有国の状況により肥料原料価格は高騰した。2008 年のリン危機の際はリンのみが高騰したのに対し、今回は、全ての肥料原料価格が高騰したことが根本的に異なっていた。2024 年現在、これらの価格高騰は落ち着きを見せているが高止まりしている状況にある。飼料に目を向けてみると、我が国の畜産は濃厚飼料の約 80%を海外に頼っている状況にある。

    家畜排せつ物中には肥料となる成分が含まれている。年間 8000 万トンの家畜排せつ物を有する我が国は、肥料資源を潤沢に持っているとも考えられる。これも海外の飼料に由来したものである。

    一部の畜産農家では耕種農家と連携して家畜ふん堆肥を飼料作物生産に用いて地域循環を図っている。こうした事例から、地域内で資源を循環させることが、農畜産業の持続可能性には必要であることがうかがえる。我が国の食料を全て国内で調達することは不可能だが、地域資源循環を地道に進めていくことが、食料安全保障上では重要だと考えられる。

  • 古田 謙一, 田中 ゆり子
    2025 年 21 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/11
    ジャーナル フリー

    食料・農林水産業における環境負荷低減の取組を進め、持続可能な食料システムを構築していくためには、消費者を含めた食料システムの関係者一人ひとりの理解と協働が不可欠であり、生産者が行っている環境負荷を低減する工夫や努力を消費者にわかりやすく伝達することが重要である。

    農林水産省では、2020 年度から開催している有識者等による検討会での議論を基に、栽培データの入力により、農産物の生産段階における温室効果ガス排出量と削減貢献効果を数値で把握することができる簡易算定ツールを、これまでに米や野菜など 23 品目について作成した。また、簡易算定ツールの算定結果に基づいて、当該生産活動が地域の排出削減にどれだけ貢献したかを星の数で表す等級ラベル「みえるらべる」を用いて、農産物や食品に表示する方法をまとめ、これらを実践する際の考え方や手順を示したガイドラインを策定し、2024 年 3 月から「農産物の環境負荷低減の取組の『見える化』」として、本格運用を行っている。この等級ラベル表示では、対象品目を米に限定し、生物多様性保全の取組も温室効果ガス削減貢献と併せて表示することを可能としている。今後は、現在 23 品目としている温室効果ガス削減貢献の対象品目へ、畜産物を追加することを検討している。

    生産段階における環境負荷低減の「見える化」の推進と並行して、食料システム全体での脱炭素の実践と、その「見える化」に向けて、官民の協議体である「持続可能な食料生産・消費のための官民円卓会議」の下で議論が行われている。この中で、2023 年に食品関連事業者等が製品のカーボンフットプリント(CFP)を算定する際に参照できる自主算定ルールの方向性が提案されたことを受け、2024 年にかけて、加工食品共通の CFP 算定ガイド案、及び輸入原材料の排出量算定の際のデータベース活用に係るガイダンスが作成・公表された。現在、これらが、中小企業を含む多様な食品関係事業者において活用しやすいガイダンスとなるよう、更新に向けた算定実証が行われている。

    本論では、こうした食料・農林水産業における、環境負荷低減の努力の「見える化」、さらには食料システム全体における脱炭素の「見える化」に向けた取組について、現状と今後の展望をまとめた。

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