食料・農林水産業における環境負荷低減の取組を進め、持続可能な食料システムを構築していくためには、消費者を含めた食料システムの関係者一人ひとりの理解と協働が不可欠であり、生産者が行っている環境負荷を低減する工夫や努力を消費者にわかりやすく伝達することが重要である。
農林水産省では、2020 年度から開催している有識者等による検討会での議論を基に、栽培データの入力により、農産物の生産段階における温室効果ガス排出量と削減貢献効果を数値で把握することができる簡易算定ツールを、これまでに米や野菜など 23 品目について作成した。また、簡易算定ツールの算定結果に基づいて、当該生産活動が地域の排出削減にどれだけ貢献したかを星の数で表す等級ラベル「みえるらべる」を用いて、農産物や食品に表示する方法をまとめ、これらを実践する際の考え方や手順を示したガイドラインを策定し、2024 年 3 月から「農産物の環境負荷低減の取組の『見える化』」として、本格運用を行っている。この等級ラベル表示では、対象品目を米に限定し、生物多様性保全の取組も温室効果ガス削減貢献と併せて表示することを可能としている。今後は、現在 23 品目としている温室効果ガス削減貢献の対象品目へ、畜産物を追加することを検討している。
生産段階における環境負荷低減の「見える化」の推進と並行して、食料システム全体での脱炭素の実践と、その「見える化」に向けて、官民の協議体である「持続可能な食料生産・消費のための官民円卓会議」の下で議論が行われている。この中で、2023 年に食品関連事業者等が製品のカーボンフットプリント(CFP)を算定する際に参照できる自主算定ルールの方向性が提案されたことを受け、2024 年にかけて、加工食品共通の CFP 算定ガイド案、及び輸入原材料の排出量算定の際のデータベース活用に係るガイダンスが作成・公表された。現在、これらが、中小企業を含む多様な食品関係事業者において活用しやすいガイダンスとなるよう、更新に向けた算定実証が行われている。
本論では、こうした食料・農林水産業における、環境負荷低減の努力の「見える化」、さらには食料システム全体における脱炭素の「見える化」に向けた取組について、現状と今後の展望をまとめた。
抄録全体を表示