LC/MS の飛躍的な発展により、今まで検出困難であった極微量なバイオマーカー(内因性物質)の検出及び定量が可能となった。医薬品開発や医療現場では、医薬品の作用機序の解明、疾患の診断、疾病の経過予測及び治療効果の予測等に、今後益々バイオマーカーの利用が期待される。本稿は、2021 年度CERI クロマトグラフィー分析賞受賞業績の一部を纏めたものであり、生体試料中のバイオマーカーであるアミノ酸やプロスタグランジン(PGs)をLC/MS を用いて定量分析する方法の開発について概説する。一つ目は、ラットの腎疾患及び精神性疲労モデルを用いて、LC/MS によるD-アミノ酸を一斉に定量し、その挙動を評価した結果であり、幾つかのアミノ酸がバイオマーカーとして利用出来る事を見出した。二つ目は、様々な生理活性を有する化合物として知られているPGs に着目し、酸化ストレスマーカーとして知られている8-epi-プロスタグランジンF2α (8-epi-PGF2α) のヒト尿中の定量分析を確立した結果であり、高感度で迅速な多検体分析を可能とした。