蝶と蛾
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ミトコンドリア遺伝子による4種のアフリカ産アゲハチョウの系統関係
関村 利朗松原 あゆみ蘇 智慧
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2017 年 68 巻 2 号 p. 46-52

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抄録

アフリカ産のアゲハチョウ: オスジロアゲハ(Papilio dardanus),フォルカスミドリアゲハ(Papilio phorcas),ルリアゲハ(Papilio nireus),アフリカオナシアゲハ(Papilio demodocus)と日本に生息するアゲハチョウ科のチョウとの分子系統関係を,ミトコンドリアDNAの ND5COICOII 遺伝子領域の塩基配列を使って分析し,検討した. アゲハチョウ属(Papilio)の分子系統樹を作成するにあたっては,本研究で得られた10種のチョウの塩基配列データの他に20種類のND5COICOII 遺伝子データを米国国立生物工学情報センター(NCBI)から取得して利用した.特に,本研究ではアフリカと東・南アジア(日本を含む)地域に生息するチョウのベーツ擬態の起源に注目した.本研究で得られた主な結果は以下の通りである.(1)オスジロアゲハ(P. dardanus)とフォルカスミドリアゲハ(P. phorcas)は,姉妹関係を示したが,日本に生息するアゲハチョウ属のチョウと分子系統的類縁関係を持たない.(2) ルリアゲハ(P. nireus)は,マダガスカルに生息するオリバズスルリアゲハ(P. oribazus)そしてエピフォルバスルリアゲハ(P. epiphorbas)と姉妹関係を示した.しかし,日本産のアゲハチョウ類とは類縁関係を示さなかった.(3) アフリカオナシアゲハ(P. demodocus)は,アジアの東部および南部地域に広く生息するオナシアゲハ(P. demoleus)と姉妹関係を示した.これは,この2種のチョウが近縁であり共通祖先由来であることを示唆している.この結果はCOICOII EF-1α 遺伝子を用いた Zakharov et al.(2004)のものと一致する.(4)クロアゲハ(P. protenor)とオナガアゲハ(P. macilentus)に観察される雌雄両性擬態はシロオビアゲハ(P. polytes)とナガサキアゲハ(P. memnon)に見られる雌限定の擬態と緊密な関係があることが示唆された.(5)P. glaucus(clade J)と P. clytia(clade K)の姉妹関係は強く支持された.最後に,アフリカと東・南アジア(日本を含む)に生息する蝶に見られる雌限定擬態について,分子系統学的議論だけでなく他の視点(例えば,最近発見された目的遺伝子)からも議論した.

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© 2017 日本鱗翅学会
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