抄録
2021年の障害者別解消法の改正により、2024年6月までに私立大学を含めたすべての大学で合理的配慮を提供することが法的義務となる。円滑で適切な合理的配慮の提供には障害学生支援に関する専門知識を持つ者が必要であるが、現状では多くの大学では障害学生支援の体制が十分整っているとは言い難い状況である。2015 年9 月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」に記載された、2030 年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である「SDGs(Sustainable Development Goals。持続可能な開発目標)」に取り組む大学が増えてきている。障害学生支援は、「2030アジェンダ」の前文で示されている、「誰一人取り残さないことを誓う」という基本原則と一致しており、17あるSDGsの中の一つ、目標4.「(教育)質の高い教育をみんなに:すべての人々の包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」と理念的に一致している。これまで主に障害者差別解消法の観点から障害学生支援の必要性が語られることが多かったが、SDGsの観点から見ても、大学における障害学生支援は重要であり、大学は障害学生支援の体制の整備・充実を図っていかなければならない。