2003 年 43 巻 2 号 p. 113-120
2000年と2001年に,都市部においてバット・ディテクターを用いてアブラコウモリ(Pipistrellus abramus)の飛翔活動の季節性と活動場所の選択について調査した.アブラコウモリは,2月の日没時の気温が15℃を越えると飛翔活動が確認されるようになり,その後気温の上昇とともに飛翔活動の確認回数も増加した.5月中旬から7月上旬にかけて確認回数が一時低下したが,7月下旬から9月上旬にかけて再び増加する傾向がみられた.12月の気温が15℃を下回ると飛翔活動が確認されなくなった.もっとも多くの飛翔活動が確認されたのは水場であり,続いてオープンスペースとその他であり,二次林ではもっとも少ない傾向がみられた.二次林内はコウモリにとっての餌資源である昆虫類が豊富でありながら,他の環境よりも空間が閉鎖しているために飛翔活動には不適であると考えられ,空間的な要因がアブラコウモリの飛翔活動場所の選択に大きな影響を与えていることが示唆された.