哺乳類科学
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原著論文
秋田・岩手両県におけるツキノワグマの春季有害捕獲数変動に影響する要因
根本 唯星崎 和彦岡 輝樹
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2010 年 50 巻 1 号 p. 31-35

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抄録
ツキノワグマ(Ursus thibetanus)の人里域への出没に伴い有害捕獲数が増加するのは主に夏から秋であるが,冬ごもり解除直後から初夏(4~6月)にかけて有害捕獲数が他年より多い年がある.本研究では,この時季の有害捕獲数の変動の予測を可能にするため,秋田,岩手県における有害捕獲数の変動に雪解けのタイミング(消雪日)と前年のブナの豊凶程度がどの程度影響しているかについて解析をおこなった.重回帰分析の結果,秋田県では4~6月の有害捕獲数と消雪日の間に有意な負の相関が確認されたが,他は認められなかった.秋田県では,雪解けが早い年には,春から夏にかけて有害捕獲数が多い可能性があり,住民にクマと遭遇する危険性についての注意を促すことが必要と考えられた.一方,岩手県ではこの要因では有害捕獲の多寡を説明することはできなかった.
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© 2010 日本哺乳類学会
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