抄録
三重県内11カ所のスギ,ヒノキ若・壮齢林において,2007年3月から2009年11月にかけて,ニホンジカCervus nipponによる樹皮食害痕の経時的変化を調べた.樹木の成長期には内樹皮,外樹皮とともに形成層も剥ぎ取られ,露出した木部表面には新たな組織形成にともなう形状の変化は生じなかった.一方,成長休止期には外樹皮が剥がれ,木部に張り付いた薄い膜状の内樹皮に多数の歯痕が残されていた.多くの場合,表面の形状は変化しなかったが,歯痕密度が低い場合には歯痕の周囲に木部の肥大による巻き込みが認められるものがあった.被害後2成長期を経過しても,成長期と成長休止期の被害木の区別は可能であることがわかった.