哺乳類科学
Online ISSN : 1881-526X
Print ISSN : 0385-437X
ISSN-L : 0385-437X
短報
ヤクシカの牧場利用と利用個体の密度に影響する要因の把握
川村 貴志幸田 良介立澤 史郎
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 53 巻 2 号 p. 345-350

詳細
抄録
牧場はシカの良好な餌場となり,個体数増加にも影響しうるが,屋久島におけるヤクシカ(Cervus nippon yakushimae)の牧場利用の実態は不明である.屋久島町営長峰牧場において2006年から2009年にかけてほぼ毎月の頻度で行ったスポットライトカウントの結果,平均で420頭/km2と非常に多くのヤクシカが牧場を利用していること,日没後すぐの時間帯や放牧地の耕耘があった場合の密度は低いことが明らかとなり,ヤクシカの牧場利用に人間の活動や利用できる牧草量が影響していることが示唆された.一方で屋久島においてはシカの牧場利用個体の密度について北日本でみられるような明確な季節変動は見られなかった.この原因として,屋久島の牧場が照葉樹林帯に位置し,餌資源の季節変動が小さいことが考えられた.長峰牧場と牧場周辺のヤクシカを取り巻く環境は2010年以降に激変しており,モニタリングの継続が求められる.
著者関連情報
© 2013 日本哺乳類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top