哺乳類科学
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原著論文
ツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)における椎骨の基本数 と第一腰椎および腰仙結合部における形態変異
中村 幸子横山 真弓斎田 栄里奈森光 由樹
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2014 年 54 巻 1 号 p. 43-51

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抄録

兵庫県が実施しているツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)の死亡個体の分析により,椎骨や四肢骨の関節周辺部分を中心とした,骨の形態異常が高確率で確認されている.この骨形態異常の診断や原因の推察,および今後の個体群存続への影響度の評価を行う上では,ツキノワグマの正常骨に関する基本情報が不可欠である.本研究では,兵庫県を含む3地域(東中国個体群,北近畿個体群,岩手県内群)のツキノワグマの骨を比較し,特に椎骨の基本数および正常形態を分析した.その結果,ツキノワグマの椎骨の基本数は,頚椎7,胸椎14,腰椎6,仙椎5であった.仙椎を除く3種の椎骨の数の組み合わせパターンを分析すると,基本数以外の組み合わせを示すパターンが3パターン確認され,それぞれの発生には地域性があった.椎骨の形態に関しては二つの大きな特徴的変異が確認された.一つは第一腰椎の横突起の伸長であり,これは北近畿個体群に属する個体で有意に多く確認された.もう一つは腰仙結合部における形態変異で,東中国および北近畿個体群に属する個体のみで確認された.脊椎数の組み合わせパターンが複数確認されたこと,および腰仙部の脊椎形態変異が生じた原因については今回明確にすることはできなかった.しかし,これらの発生率が生息地域ごとに特徴づけられたことから,個体群の遺伝的背景の違いが発生の一因となっている可能性が示唆された.

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© 2014 日本哺乳類学会
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