抄録
釧路湿原国立公園におけるエゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の個体数管理を効果的に実施するために,ロードカウント及び航空機調査によってエゾシカの個体群が冬期にどの生息地を選択しているのかを調査した.湿原内を通る1本の調査ルートで2010年11月~2011年5月にロードカウントを実施し,本国立公園の北部で2011年2月上旬に航空機調査を実施した.広葉樹林における選択性指数の信頼区間は,1月上旬~3月上旬のロードカウント及び航空機調査で1を上回った.このことから,エゾシカは冬の長期間にわたり,釧路湿原国立公園の広範囲において広葉樹林を選択的に利用していることが示唆された.コッタロ展望台から塘路湖までの区域では,11月,12月,4月及び5月にエゾシカをほとんど観察できなかったが,1月~3月の密度指標は,60頭/km2以上を示したため,ロードカウントの区域におけるエゾシカは,冬期に集中していることが明らかとなった.広葉樹林において銃器やワナによる計画的な捕獲を冬期に実施することが,本国立公園における個体数管理を効果的に進める上で有効だと考えられる.