哺乳類科学
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短報
長距離通信技術を応用した新しいテレメトリシステム“GPS-TX”によるツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)の行動追跡事例
安江 悠真青井 俊樹玉置 晴朗矢澤 正人高橋 広和瀬川 典久時田 賢一
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2016 年 56 巻 1 号 p. 27-36

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抄録

GPSを利用した従来のテレメトリシステムには,発信機回収の労力,及び位置情報取得から現地踏査までのタイムラグなどの課題がある.これらの課題を解消するため,長距離無線通信技術を応用した新たなテレメトリシステム「GPS-TX」が開発された.本システムは,野生動物の現在位置をリアルタイムで把握することで,野生動物の行動をより詳しく明らかにすることが期待できる.著者らは,岩手県遠野市においてGPS-TXをニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)の追跡に適用し,3頭の追跡個体の行動把握に努めた.追跡個体の位置情報からコアエリアを抽出し,現地踏査を行った結果,森林下層部の状況やニホンツキノワグマの痕跡を基に,コアエリアにおける追跡個体の行動を推測することができた.本報告では,その追跡事例を基に,GPS-TXを用いたニホンツキノワグマの行動追跡調査の現状と課題について整理した.

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© 2016 日本哺乳類学会
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