2017 年 57 巻 1 号 p. 69-75
活動期におけるテングコウモリ(Murina hilgendorfi)のねぐら利用様式を解明することを目的に,山梨県早川町において,廃坑および隧道,枯葉トラップ,ホウキギ(Bassia scoparia),家屋外壁を対象に2013年9月から2016年8月にかけてテングコウモリのねぐら利用を調査した.テングコウモリは5月から11月,特に5月から7月に,廃坑および隧道を利用した.枯葉トラップは9月にのみ利用され,他の季節には利用されなかった.ホウキギおよび家屋外壁は枯葉トラップよりも多くの時期に利用が観察され,それぞれ6月,8月,9月,10月と6月,10月に観察された.枯葉のように身を隠すことができる構造物よりも,むしろ体を外部にさらす構造物を頻繁に利用することが示唆された.6月,8月,9月,10月には構造の異なる複数のねぐらタイプを同時期に利用した.また,連続したねぐら利用の調査から,数日間もしくは1日ごとにねぐらを頻繁に変えていることが示唆された.