哺乳類科学
Online ISSN : 1881-526X
Print ISSN : 0385-437X
ISSN-L : 0385-437X
総説
タヌキが利用する果実の特徴―総説
高槻 成紀
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 58 巻 2 号 p. 237-246

詳細
抄録

タヌキNyctereutes procionoidesが利用する果実の特徴を理解するために,タヌキの食性に関する15編の論文を通覧したところ,タヌキの糞から103の植物種の種子が検出されていた.これら種子を含む「果実」のうち,針葉樹2種の種子を含む68種は広義の多肉果であった.ただしケンポナシHovenia dulcisの果実は核果で多肉質ではないが,果柄が肥厚し甘くなるので,実質的に多肉果状である.また,乾果は30種あり,蒴果6種,堅果4種,穎果4種,痩果4種などであった.このほかジャノヒゲOphiopogon japonicusなどの外見が多肉果に見える種子が3種あった.果実サイズは小型(直径<10 mm)が57種(55.3%)であり,色は目立つものが70種(68.0%)で,小型で目立つ鳥類散布果実がタヌキによく食べられていることがわかった.「大型で目立つ」果実は15種あり,カキノキDiospyros kakiはとくに頻度が高かった.鳥類散布に典型的な「小型で目立つ」果実と対照的な「大型で目立たない」果実は10種あり,イチョウGinkgo bilobaは検討した15編の論文のうちの出現頻度も10と高かった.生育地にはとくに特徴はなかったが,栽培種が21種も含まれていたことは特徴的であった.こうしたことを総合すると,タヌキが利用する果実には鳥類散布の多肉果とともに,イチョウ,カキノキなどの大型の「多肉果」も多いことがわかった.テンと比較すると栽培植物が多いことと大きい果実が多いことが特徴的であった.

著者関連情報
© 2018 日本哺乳類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top