2020 年 60 巻 2 号 p. 219-224
大正から昭和初期にかけて採集・作製されたものと思われるオオコウモリ類の標本が愛媛県内の高等学校から4点発見された.この時代にへき地である小笠原諸島や琉球列島に生息するオオコウモリ類が多数採集され,本土の小学校や中学校(現在の高等学校)に理科(博物学)の教材標本として販売・収蔵されていたことは,当時の人々の生物に対する価値観や標本の流通範囲などを知る上で興味深い.現在,国内の学校に保管されている古い標本の一部は教育現場で活用されず,劣化も進んでいることから今後廃棄される恐れが高い.このような標本の中には我が国の学術研究の黎明期に採集された貴重なものが含まれることから,博物館や研究者らによる早期の組織的な回収が望まれる.