哺乳類科学
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特集 追悼内田照章先生
九州大学農学部動物学教室におけるネズミ被害対策研究の取り組みの歴史
山田 文雄
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2021 年 61 巻 1 号 p. 55-68

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抄録

九州大学農学部動物学教室の教授であった内田照章先生の追悼記念として,本稿では特にネズミ研究に注目して,今から100年前に創設された同教室と,73年前から開始されたネズミ被害対策研究の取り組みを述べ,わが国のネズミ被害や対策の歴史との関係を述べた.ネズミ被害の多かった太平洋戦争後の1950–1980年代において,同教室は四国,九州,奄美群島,沖縄諸島および海外の南洋諸島におけるネズミ対策研究や基礎的研究を行い,また従来からわが国で広く使用されていた殺鼠剤と天敵動物に関する効果の評価や天敵動物の使用上の警告などを行った.このような取り組みは,わが国では当時としては先駆的であった.今後の課題としては,生物多様性と生態系保全のために,特に,捕食性哺乳類が元来生息していなかった島嶼の外来種ネズミと定着した天敵動物の外来種対策を総合的に実施する必要があると考える.

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