哺乳類科学
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フィールド・ノート
短報
  • 伊海 結貴, 篠原 明男, 名倉(加藤) 悟郎, 七條 宏樹, 越本 知大
    2021 年 61 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル フリー

    デグーOctodon degusは南米原産の草食性齧歯類で,個体間での優れた音声コミュニケーションや道具機能の理解など,他の齧歯類に見られないユニークな特徴をもつ.近年ではこうした特徴が脳の高次機能と関連付けられ,主に医科学,行動心理学の分野で脳の発達やアルツハイマー病態の解明に有用なバイオリソースとしての特性把握が進められている.今回我々は宮崎大学において系統管理を続けているデグー集団内に「てんかん様発作」を示す個体を見出した.調べる限りデグーのてんかん様発作に関する報告はなく,その症状を精査することで,我々は新たな研究資源の創出の可能性を提示できると考えた.そこで本研究ではデグーのてんかん様発作症状を臨床的に評価する為の客観的指標を作成することを目的として,動画観察による発作の過程と強度,更には総持続時間の評価を試みた.

    デグー16頭(雌:雄=7:9)が呈した合計35回のてんかん様発作を撮影した動画を解析した結果,デグーのてんかん様発作は体の一部の異常(過程1)に始まり,続く全身の強直様症状とけいれん(過程2),短時間の静止状態(過程3),そして再び体の強直様症状とけいれん以外の異常(過程4)を経て,静止状態(過程5)の後に健常な状態を回復するという一連の過程を辿る事が示された.マウスやラットより複雑な脳機能をもつと考えられるデグーは新たなてんかんモデル動物としての可能性を有すると考えられ,本研究で初めて作成した指標はデグーに観察されるてんかん様発作の評価基準として活用できる.また本研究では,発作の強度や総持続時間には性差があることが示唆されたが,一方で発作の頻度そのものに著しい個体差が見られたことから,今後の追加検討が急務である.

報告
  • 高槻 成紀, 谷地森 秀二
    2021 年 61 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル フリー

    これまで四国のタヌキNyctereutes procyonoidesの食性は情報がなかったが,高知県と周辺から得た67例の胃内容物をポイント枠法で分析した.ほかの場所と比べると昆虫が多く(全体の占有率25.7%),特に冬でも25.8%を占めた.果実は重要であったが,他の場所に比べれば少なく,最大で秋の30.4%であった.カタツムリ(ウスカワマイマイAcusta despecta)が春(19.3%)を中心に多かったことと,春にコメを主体とした作物が25.0%と多かった点は特異であった.

  • 木元 侑菜, 勝原 涼帆, 馬場 友希, 亘 悠哉
    2021 年 61 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル フリー

    鹿児島県奄美群島の喜界島において,2頭のコウモリ類の死体が発見された.2019年8月31日に初めて発見された死体は雄で,前腕長34.9 mm,陰茎長11.5 mmであった.本死体はオオジョロウグモNephila pilipesの網に捕獲されており,内臓の大部分がクモに摂食されていた.2019年9月15日に発見された死体も雄であり,前腕長32.2 mm,陰茎長11.2 mmであった.この死体はゴルフ場の事務所内で発見された.外部形態や頭骨を用いた種同定の結果,2例ともこれまで喜界島に生息記録のなかったアブラコウモリPipistrellus abramusと判定された.またバットディテクターによる音声調査により,アブラコウモリと思われる音声が島全域から確認された.

  • 佐藤 雄大, 江藤 毅, 篠原 明男
    2021 年 61 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル フリー

    エチゴモグラMogera etigoは,新潟県の越後平野にのみ生息する日本固有種である.本種は,生息域が局所的であり,人為的な生息地改変や,競合種であるアズマモグラM. imaizumiiとの種間競争の影響により,分布域の縮小が懸念されている.過去の研究において,エチゴモグラの主要分布域の一部であり,その分布変化の最前線と考えられてきた新潟市江南区および五泉市の2地域で,エチゴモグラの分布後退が懸念されているが,最近の分布状況は明らかではない.本研究では,モグラのトンネルサイズを計測することで,これら2地域におけるエチゴモグラとアズマモグラの分布状況の調査を行った.その結果,新潟市江南区では,アズマモグラのトンネルが新たに確認され,エチゴモグラと同所的に生息していることも明らかとなった.過去の分布状況と比較すると,同地区におけるエチゴモグラの分布域は縮小している可能性が示唆された.一方で五泉市ではアズマモグラが優占し,局地的に単独でエチゴモグラのトンネルがみられる区域と,2種が同所的に生息する区域が確認された.五泉市における2種の分布状況は,過去のものと比較して大きな変化はみられなかったが,今後の土地利用の変化によっては,局在化したエチゴモグラの生息地は消失することも懸念される.

  • 宗兼 明香, 南 正人, 高槻 成紀
    2021 年 61 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル フリー

    長野県東部の御代田(みよた)町のカラマツ林に生息するテン(ニホンテンMartes melampus)の食性を糞分析法により明らかにした.食物組成の量的評価は出現頻度法とポイント枠法の占有率によった.平均占有率は,春には哺乳類(64.1%),夏と秋には果実(夏は65.3%,秋は78.0%)が多かった.種子の出現からわかった果実利用は月ごとに変化し,春にはミズキCornus controversaなど,夏にはサクラ属Cerasus spp.など,秋にはマタタビ属Actinidia spp.やアケビ属Akebia spp.などが多かった.昆虫は夏でも4.9%に過ぎず,他の地域より少なかった.これは本調査地に果実が豊富なためと考えられた.出現頻度法による評価では平均占有率が小さかった昆虫や葉が過大に評価された.占有率-順位曲線からは平均値や頻度だけではわからない,食物の供給量とテンの食物選択性を読み取ることができた.テンに利用された果実には林縁植物が多いことからテンが林縁植物の指向性散布をする可能性が示唆された.

  • 浅利 裕伸, 木元 侑菜, 野田 健司
    2021 年 61 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/10
    ジャーナル フリー

    奄美大島においてヤンバルホオヒゲコウモリMyotis yanbarensisのねぐら3事例とリュウキュウテングコウモリMurina ryukyuanaのねぐら2事例を2016年~2019年に確認した.ヤンバルホオヒゲコウモリは,森林内のカルバートの天井に開いた水抜き穴や天井の隙間で休息していた.また,2個体が冬季に樹洞を利用していたことから,本種は人工構造物のほか,樹洞をねぐらとすることが明らかとなった.リュウキュウテングコウモリは,地上高2.2 mの位置にある枯葉内で休息する1個体が確認された.また,森林内の枯死木の内部に1個体が確認された.本研究において,これら2種が樹洞や枯死木を利用していることが示されたことから,樹洞木や枯死木が2種の保全に重要な役割を果たすと考えられるが,事例が少ないためさらなる研究が必要である.

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