哺乳類科学
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原著論文
岩手県におけるイノシシSus scrofaの分布拡大の変遷と出没確率の予測
大西 尚樹今田 日菜子一ノ澤 友香
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2022 年 62 巻 1 号 p. 21-30

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抄録

岩手県ではイノシシ(Sus scrofa)は明治期に絶滅したが,2007年以降県内各地で目撃されるようになった.岩手県におけるイノシシの出没情報(目撃,被害,捕獲)をまとめ,分布拡大の変遷を明らかにした.さらに,種の分布モデル(Species Distribution Model)を用いて,今後のイノシシの出没確率を予測した.2007年に奥州市で1件目撃された後,2010年まで岩手県内では目撃がなかったが,2011年より県南部を中心に目撃が増え,2018年には全県的に目撃されるようになった.被害は2012年から発生し,2014年から2017年にかけて増加した.この状況から2007年~2010年を移入期,2011年~2017年を拡大期,2018年以降を定着期と呼べるだろう.種の分布モデルによるイノシシの出没確率は標高,植生,土地利用データを組み合わせて用いることで,高い精度で予測することができた.2017年までの出没データを用いて出没確率を予測し,2018年および2019年に実際に出没した地点と比較したところ,予測確率が高い地点ほど実際に出没していることが確認された.今後は,出没確率の高い地域から生息密度が高まり,イノシシが出没するようになることが予測される.

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© 2022 日本哺乳類学会
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