特定外来生物クリハラリスCallosciurus erythraeusの国内侵入とともに,それを固有宿主とする土壌伝播性の外来糞線虫Strongyloides callosciureusが持ち込まれ,静岡県および熊本県で蔓延が報告されている.この糞線虫による在来生態系への影響が懸念されるなか,寄生状況が調べられた地域は未だ限られており,リスク評価のための基礎情報は不足している.本研究では,関東地方のクリハラリス定着地域(神奈川県横浜市・横須賀市・鎌倉市,茨城県坂東市)においてS. callosciureusの寄生状況を明らかにすることを目的に,2016,2018,2019年度に駆除された124頭を検査した.その結果,糞線虫の寄生は横須賀市の8頭のみに見られ(寄生率13.33%,平均寄生虫体数0.40虫体,平均寄生強度3.00虫体),今回対象とした地域の寄生率は過去に報告されているものと比較し低いか,あるいは虫体自体が存在しない状況が示唆された.なお,得られた全ての虫体について18S rDNA領域および28S rDNA領域の部分配列を解読した結果,過去に浜松市のクリハラリスから得られたS. callosciureusと最も高い相同性(99.93%および100.00%)が示された.
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