2023 年 63 巻 2 号 p. 193-214
植物は消費者による摂食を回避するために様々な被食防御物質を含んでいる場合がある.そのひとつであるタンニンは渋みの成分であり,消費者に対してタンパク質の消化率を減少させたり,消化管に損傷を与えたりするなど有害な影響を及ぼす.しかしタンニンは植物界に広く分布しているとされながら,日本ではその分類学上の分布情報は限られていた.本研究は植物界におけるタンニンの分布をスクリーニングすることを目的として,117科349種の植物のタンニン含有率を調査した.その結果,哺乳類の採食記録のある植物を含む174種(49.9%)でタンニンが検出された.哺乳類のタンニンを含む植物資源に対する選択性や生理学的な応答については未だ不明な点が多く,今後哺乳類の詳細な食性研究と共に,植物と消費者間の相互作用に関する生理学的な研究の発展が期待される.