2018 年 37 巻 3 号 p. 22-37
イノベーション普及論の分野における有名な古典理論において,早期に採用した消費者はいまだ採用していない消費者に対して正の口コミを発信するというテーゼがあるが,これに対して,近年,消費者はしばしば高い独自性欲求を有しており,そのような場合には,正の口コミ発信は控えられ,その結果,普及は生じない,という主張が展開されるようになった。しかしながら,この主張は,独自性欲求を一次元的にとらえた上で展開されている点に問題を抱えている。本論は,独自性欲求を三次元に分類した上で,正の口コミを抑制する効果を有するのは特定の種類の独自性欲求のみであり,独自性欲求の高い消費者が必ずしも正の口コミ発信を控えるとは限らないと主張する。