2019 年 39 巻 1 号 p. 43-60
日本の農林漁業は,就労者の減少や高齢化により,深刻な状況に直面している。こうした状況の中,政府は,農林漁業再生手段のひとつとして6次産業化をあげ,それを推進するため,さまざまな支援を行っている。しかしながら,6次産業化の研究は,政府の支援策に関する考察や事例の紹介にとどまり,6次産業化の成果規定要因に関する定量的分析はほとんどなされていない。そこで,本稿は,政府が作成した「6次産業化の取組事例集」を用いて,その定量的分析を試みる。分析の結果,加工と直販の両方を行う方が6次産業化の成果が高まることや,同じ6次産業化でも直販とレストランで成果に与える影響が異なることが明らかになった。また,地域への関与が高い6次産業化の方が,成果が高まることも示された。