マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
特集論文 / 招待査読論文
マーケティング機能をめぐるプラットフォームと個別事業者の相互作用的進化
根来 龍之足代 訓史
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 41 巻 2 号 p. 19-32

詳細
Abstract

本稿は,マーケティング機能を対象に,媒介型プラットフォーム(Platform: PF)におけるPFと補完者(個別事業者)との関係の相互作用的進化について論じる。その目的は,既存のPF研究が基本的に依拠する,「PFを中心に据えて,PFとその補完者との間の関係を論じる見方」とは異なる関係モデルと一般化仮説を提示することである。そのために本稿では,飲食店チェーン業界において,PFと個別事業者との間で,顧客接点機能を相互発展させている現象を事例分析する。事例研究の結果として,以下の命題を主張する。媒介型PFと個別事業者のマーケティング機能は,相互的機能拡張競争によって発展する。また,個別事業者は媒介型PFのネットワーク効果を活用するために,協業的にPF機能の開発を行うことがある。

Translated Abstract

This paper discusses the interactive evolution of marketing functions between platforms (PFs) and individual business operators. The purpose is to present a new model and hypotheses that differ from the “PF-centered view of the relationship between a PF and its complements,” upon which existing interaction-type platform studies basically rely. For this purpose, the paper conducts a case study of interactive development of customer-interaction functions between PFs and individual business operators in the restaurant chain industry. As a result of the case study, we argue the following propositions: marketing functions of interaction-type PFs and individual business operators develop through interactive competition for functional expansion; and individual business operators may collaboratively develop PF functions to take advantage of the network effects of the PF.

I. 本稿の問題意識

本稿が議論の対象とするプラットフォーム(Platform:以下,PFと表記することがある)には大きく分けて,PF技術・部品とPF製品・サービスとが存在する(Negoro & Ajiro, 2013)。PF技術・部品とは,例えば通信技術のような企業間・製品間をまたがる基盤技術,あるいは自動車のシャーシのような製品開発上の基盤部品など,多様な製品開発に用いられるコア技術・部品を指す。一方,PF製品・サービスとは,「他のプレイヤー(企業,消費者など)が提供する製品・サービス・情報と一体になって,初めて価値を持つ製品・サービス」(Negoro, 2017, p. 17)のことである。ここで,この「他プレイヤー」のことを,「補完者」と呼び,それらが提供する製品・サービスを「補完品」と呼ぶ。

PF製品・サービスには,顧客の求める製品・サービスの基盤となるPFと,コミュニケーションや取引の媒介となるPFの二種類が存在する(Cusumano, Gawer, & Yoffie, 2019; Negoro, 2017)。前者は例えば,スマートフォン(以下では,スマホと表記)のOS,ゲームのハードのように,補完品(OSにとってのアプリ,ゲームハードにとってのソフトなど)と合わさって顧客の求める機能を実現する製品・サービスの基盤となるものを指す。後者は例えば,ユーザー間のコミュニケーションの場となるSNSや,決済・取引の媒介機能を持つ電子マネーのような製品・サービスを指す。

本稿が対象とするのは,後者の媒介型PFである。さらに,媒介型PFには,「ネット以前には存在していなかったサービス」と,「〈ネット以前から存在していた個別事業者のビジネス機能〉の一部を分離して,企業をまたがって横断的に提供するサービス」として誕生・発展しているものがある。例えば,ネットオークションは前者の例であり(ネット以前のオークションは主に美術・骨董品を対象とした別市場),PFのクーポンビジネスは後者の例である(ネット以前にも,例えば飲食店は紙やカード式のクーポンを発行していた)。本稿は,媒介型PFの中でもさらに後者の「個別事業者のビジネス機能の一部」を提供するPFと,そのビジネスの対象となる個別事業者(Individual Business Operator:以下,IOと表記することがある)との関係を対象にするものである。本稿は,PFが,もともと個別事業者が持っている機能を取り込み共通化することで誕生・発展する過程から始まるプロセスを対象にするため,PF独自の市場創造から始まる前者は対象とならない。

本稿の問題意識は,上記を対象に,従来の「プラットフォームを中心に据えて,プラットフォームとその補完者との間の関係を論じる見方」を補う,「プラットフォーム(PF)と個別事業者(IO)との間で起こる相互作用的進化の見方」を示すことである。その問題意識を追求するプロセスとして本稿では,マーケティング機能に着目して,後者の見方に立つモデルと一般化仮説を提示することを目的とする。

そのために,本稿では,まずPFが,IOが本来有していたどのマーケティング機能を取り込むことでPFとして誕生するかという点から分析を始める。そのうえで,PFとIOが相互に参照しあうことで,各々が自社の提供機能を発展させていくメカニズムに着目する。具体的事例として,飲食店チェーン業界(以下,飲食店業界と表記)におけるPFとIOとの間の機能拡張競争の分析から,「PFとIOの相互作用的進化のモデル」を提案する。

本稿は,一般化の範囲として上述の通り,「ネット以前から存在していたIOのビジネスの機能を分離して,PFが各企業をまたがって横断的にサービスを提供する」業界一般を想定している。ただし,本稿で実際に分析するのは,飲食店業界においてPFが提供している製品・サービス,具体的にはクーポンやポイント,デリバリーなど,元々はIOが独自に提供していた,企業とエンドユーザーとの間のコミュニケーションや取引に関連するもの,つまり顧客接点に関連するマーケティング機能である。なお,本稿が提案する見方では補完者という言葉は適切でないので,本稿では適宜「個別事業者(IO)」という言葉を用いる。ただし,IOがPFを利用する場合には,PFの補完者となる。

II. 先行研究の検討と本稿のリサーチクエスチョン

以下では,本稿の対象である媒介型PFに関する主な先行研究を検討する。それによって,上述した「PFとIOとの間で起こる相互作用的進化の見方」が,既存研究が暗黙に依拠する立場とどう異なるかを示す。その上で,本稿のリサーチクエスチョン(RQ)を提示する。

1. PF視点の研究

PFに関しては,ツーサイドPF(Two-Sided PF)に着目した研究が進展している(Eisenmann, Parker, & Van Alstyne, 2006, 2011; Hagiu & Yoffie, 2009; Parker, Van Alstyne, & Choudary, 2016)。これらの研究では,PFは「Products and services that bring together groups of users in two-sided networks(二つのユーザーグループを結びつけ,ツーサイドのネットワークを創発する製品やサービス)」(Eisenmann et al., 2006, p. 94)と,PFの持つ媒介性を意識して定義されるのが通常である。

媒介型PFのマネジメントにおいて重要となるのが,ユーザーグループ(サイド)間に発生するネットワーク効果の存在である(Armstrong, 2006; Eisenmann et al., 2006)。媒介型PFにおけるネットワーク効果には,「サイド間ネットワーク効果」と「サイド内ネットワーク効果」が存在する。前者は,片方のサイドのユーザーが増加すると,もう片方のサイドにとってPFの価値が向上あるいは低下する現象を指す。サイド間ネットワーク効果は,消費者と補完者という異なるユーザーグループの間に働くものである。一方,後者のサイド内ネットワーク効果は,ユーザーの数が増えると,そのユーザーが属するグループにとって,PFの価値が向上あるいは低下する現象を指す。

これらのネットワーク効果をマネジメントすることが,媒介型PFの価値向上,ひいては特定のPFが一人勝ちに至る要因の一つとなることがこれまで指摘されてきた(Cusumano et al., 2019; Eisenmann et al., 2006; Negoro, 2017)。そのためPFは,消費者や補完者を自社PFへと参加させるために,特定のユーザーグループに対してコスト割れの価格設定を設定したり,PF上に魅力のあるスター製品を用意したり(Eisenmann et al., 2006, 2011),時にはユーザーに対する優先順位付けを行ったりする(Moazed & Johnson, 2016)。とりわけ,サイド間ネットワーク効果を高めるために,ユーザーに訴求できる補完者をPFに参加させることは,PFにとって必須となる。そのため,PFはAPIのオープン化を行ったり,参加のための障壁を下げたり(例:開発費用の補助)することで補完者が参加しやすくしたり(Boudreau, 2010),補完者によるイノベーションの誘因となるツールの提供を行ったりする(Gawer, 2009)。このように,既存研究では,PFが補完者を含むエコシステムをどう拡大していくかが重要な議論となってきた(Cennamo & Santalo, 2013)。

2. 補完者視点の研究

他方,一般にPFの立場で議論を行うことが多いPF研究の中で,補完者の観点から研究を行ってきた文献も存在する。補完者(個別事業者(IO))にとって,どのPFに参加するかは,自社の収益を左右する問題である(Ceccagnoli, Forman, Huang, & Wu, 2012)。例えば,Hagiu and Yoffie(2009)は,補完者がPFへの参加の際に留意すべき要諦として,(1)既存のPFを利用すべきか,(2)どのPFに参加すべきか,(3)どのようにPFを利用すべきか,の三点を提示する。

また,先行研究の中には,補完者のPFへの依存を減らすための戦略を整理するものもある。Edelman(2014)は,補完者と媒介型PFとの関係に着目することで,PFが網羅できないサービス・機能領域に補完者がつけ込むことや,PFを介さない直接取引を強化することを,補完者が取り得る戦略として提案している。また,PFがその支配力を前提とした優越的な行動を取ることの是非を世に訴えることや,他のPFを支援・設立することも,補完者の戦略オプションとしてあげている。

しかし,こうした補完者視点での先行研究はあくまでも,PFによる補完者の勧誘や管理に対して,補完者がどのように対抗(対応)するかという,PF側からのコントロールが存在することを前提とした研究となっている。ただし,Amazonの電子書籍のPFであるKindleに対して,海外旅行用ガイドブックを出版している個別プレイヤー(補完者)がどのように出版の意思決定を行っているか,いかにしてPFの関与の範囲を限定して自社の交渉力を保っているかを論じたWang and Miller(2020)の研究には,出版社のPFに依存しない出版活動をPFから独立した活動として明確に研究対象にしているという意味で,本稿の問題意識に通じる視点の萌芽がある。

3. 既存研究における死角

以上で見た先行研究は,PFを中心に据えたうえで,いかにしてエンドユーザーや補完者を勧誘,管理するかという観点に立ったものであったといえる。また,補完者視点の研究も,強力な交渉力を持ったPFを中心に据えたうえで,補完者がいかにしてそこに参加するか,利用するかといった観点に立ったものであったといえる。既存研究での「補完者」という表現自身がその問題意識の反映である。これが,本稿が,既存研究はPF視点であっても,補完者視点であっても,「PFを中心に据えたモデル」を前提にすると規定する理由である。実際,当該分野の既存研究を網羅的にレビューしたMcIntyre and Srinivasan(2017)では,PF研究の対象は「PF仲介ネットワーク(Platform-Mediated Networks)」であるとして,研究の前提として常にツーサイドPF論が意識されている。

しかし,そもそも上述した本稿の対象においては,事業者がPFに頼る活動は一部だけである。さらに,ある業界において媒介型PFが発達した後でも,PFの機能を自社に取り込もうとする事業者も存在する。また,媒介型PFを利用しない事業者も存在する。したがって,本稿もツーサイドPF論が中心的対象とする媒介型PFを一方の対象とするものではあるが,本稿の立場では,事業者はPFの存在を前提にしてそれを「補完」する存在ではなく,「独立の事業者(個別事業者:IO)」なのである。この場合IOは,時と場合に応じて媒介型PFを利用すること「も」あると考えることができる。本稿の議論は,このような見方を前提に,PFによる「補完者」の勧誘・管理,あるいは補完者のPFへの参加ではなく,PFとIOを対等の当事者として設定して両者の相互作用を対象とする。

詳細は後述するが,本稿が分析対象とする飲食店業界においては,PFの機能には,元々IOが行っていた活動をIOを横断する形で提供しているものが多い。クーポンやポイント,デリバリーがその例である。ただし,PFは,IOが元来保有していた機能を単に取り込んで共通化するだけでなく,それを発展させる。例えば,「IOをまたがる購買行動」の分析はPF特有の提供機能である。一方で,IOも単にPFに依存するのではなく,例えばWebやスマホによるオーダー機能を自社提供することで,PFから顧客接点を取り戻したり,機能毎にPFを利用したり利用しなかったりする。

本稿では,媒介型PFであるLINEやPayPayなどと,IOである飲食店とが相互にその行動を参照しあうことで,互いに参照相手の提供サービス・機能を取り込み,それらを改善・強化し合う現象を分析する。なお,ここで「参照」とは,PFとIOの間で行われる経営行動の観察や確認という意味である。PFが参照するのは,潜在的利用企業も含めたIO「群」であるが,IOが参照するのは具体的な個別のPFである。こうした現象の分析を通じて,「PFを中心に据えた補完者の管理と補完者側からの対応」という既存研究のパースペクティブではなく,「PFとIOを対等の当事者として設定して,両者の間で起こる相互作用的進化」として見る新しいパースペクティブとその意義を示すことができると考えている1)

4. 調査の方法とリサーチクエスチョン

本稿では研究方法として単一事例研究を採用する(Yin, 1994)。本稿の目的は,PFとIOとの間で起こるマーケティング機能の相互作用的進化のメカニズムに関するモデルと一般化仮説を提示することにある。そのメカニズムは,飲食店業界において確認できる現象を時系列に沿って分析することで提示される。従って,現実の文脈における現在に至るプロセスに分析の焦点があり,観察者が事象をほとんど統制できない問題を,時間軸をもとに丹念に検討する際に効果的である単一事例研究のアプローチを選択し(Eisenhardt, 1989),仮説を導出することを目的として理論産出型事例研究を行う(Shibuya, 2009)。

本稿が分析対象とする事例は,飲食店業界におけるPFとIOとの間で起こるマーケティング機能の機能拡張競争である。当該業界を分析対象とするのは,業界内のバリューチェーンにおいて,PFとIOとの間で顧客接点の奪い合いが時系列で確認されるからである。本稿では具体的には,クーポン(集客),オーダー,決済,ポイント,デリバリーの五つのマーケティング機能を取り上げて業界全体の動向をまず概観的に分析する。次に,この業界でPFとIOとの相互作用が確認できる典型的事例として,媒介型PFであるLINEとIOであるコーヒーチェーンのスターバックスジャパン(以下では,スタバと表記することがある)との機能拡張競争の事例を詳細に分析する。なお本稿では,機能拡張競争の結果,PFとIOの顧客接点機能の相互作用的進化が進むと考えるが,ここで「進化」という概念は経路依存的な発展を意味する。

本稿が分析対象とするサービス・機能を,マーケティング機能に限定している理由を説明しておきたい。飲食店業界において媒介型PFが提供しているサービス・機能はマーケティング機能だけとは限らない。例えば,資材調達機能や求人機能に関する媒介型PFも存在する。これらの機能に関してもPFとIOの間で機能拡張競争がありえるが,現時点ではマーケティング機能ほど顕著ではない。言い換えると,現時点ではマーケティング機能においてより強い機能拡張競争が観察される。その理由は,以下だと考えられる。まず,当該業界においてマーケティング機能に関するIOのPFへの依存度が高まり,飲食店の顧客接点をPFに奪われてしまうと,IOの顧客に対するコミュニケーション力は確実に弱まる。自社で顧客データを収集できれば,PFに依存せずにOne to Oneマーケティングを実行できる(逆にOne to Oneマーケティングを志向しない会社は自社での顧客データ収集を必ずしも重視しないので,PF依存をより選択する傾向がある)。

なお,マーケティング機能に製品開発や店舗展開なども入れることがあるが,本稿が分析するマーケティング機能は,顧客接点に関係する「潜在顧客へのリーチ拡大,新規顧客獲得,顧客維持率向上,利用頻度向上,顧客単価向上に関連する提供機能」のことである(広義のCRM(Customer Relationship Management)機能)。そこで,以下では,顧客接点機能という言葉も使うことにする。

事例研究は,主に対象事例に関する一次・二次資料の詳細な分析とインタビュー調査を通じて行った。具体的には,分析対象の施策や経営行動に関して,対象各社のWebサイトやプレスリリース,関連記事に掲載されている内容をもとに分析を行った。また,一部の分析対象企業について,インタビュー2)あるいは公開講演会で入手した情報に基づき,公開資料から得た情報の事実確認も行い,分析内容の信頼性の確保に努めた。

ここまでの検討を踏まえ,本稿のリサーチクエスチョン(RQ)を以下の通り設定する。

RQ:媒介型プラットフォームと個別事業者のマーケティング機能(顧客接点機能)の相互作用的進化の具体的内容とそのメカニズムはどのようなものか

III. 事例分析

1. 飲食店業界における顧客接点機能拡張競争のマクロ的分析

以下ではまず,飲食店業界の顧客接点機能をめぐるPFとIOとの機能拡張競争の状況をマクロ的に分析する。ここで分析の対象となるPFは,飲食店業界に関する顧客接点機能,すなわち集客(クーポン)やオーダー,デリバリーなどの機能を提供しているPFである。なお,この種のPFは業界をまたがったサービスを行っていることが多い。

(1) バリューチェーンにおける媒介型PFの影響力の拡大

近年,飲食店業界においては顧客の維持・獲得,生産性の向上を目的とした,顧客接点機能のデジタル化が進んでいる。デジタル化はITやWeb技術などを基盤として進行し,当該技術を用いた製品・サービスに強みを持つ媒介型PFの活動範囲が飲食店業界でも拡大している。具体的には,飲食店業界のバリューチェーンにおける顧客接点関連の各プロセスでの媒介型PFの活動状況は図1のように整理できる。例えば,オーダーの箇所ではO:der(オーダー:(株)Showcase Gig)のようなスマホ注文に特化したPFに加え,LINEのような総合型のPFがテイクアウト用オーダー機能を提供している(本稿執筆時点ではLINE傘下の出前館が提供)。

図1

飲食店業界における顧客接点機能関連の主要な媒介型プラットフォーム

出典:筆者作成。

(2) 顧客接点機能をめぐる機能拡張競争

媒介型PFが業界での影響力を拡大している一方で,その補完者となる飲食店(個別事業者(IO))も一方的にPFへの依存度を高めていたり,PFの利用という観点のみによって行動していたりするわけではない。実際,少し時系列を長くとって,バリューチェーンの各プロセスを観察してみると,PFとIOが相互に顧客接点機能の提供や改善を繰り返す機能拡張競争が観察できる。

一例を挙げると,飲食店業界における集客機能に関しては,もともとはIO自身によって紙でのクーポン(割引券)が提供されていた。例えば,マクドナルドにおいては,デジタル化が進行するよりも遙か前から,チラシや店頭で提供される商品への添付でクーポンが配布されていた。その後,2010年12月にスマホ用マクドナルド公式アプリの提供が開始されると3),それを用いたデジタルクーポンの利用が普及していった。後述するが,スタバも2013年の6月から,「Starbucks eTicket」という自社独自クーポン(商品との交換券)の提供を行っている。

このように旧来から存在していたクーポンをビジネス化したのが,媒介型PFのクーポンサービスである。2012年8月にLINEは,飲食店各社のクーポンを集めて消費者に提示する「LINEクーポン」の提供を日本国内で開始した4)。また,2018年3月にスマートニュースが開始した「スマートニュースクーポンチャンネル」は,その1年強後には累計20億回ページビューを記録するサービスへと成長した5)。さらにLINEでは,2019年4月より事業者向けのLINE@アカウントをLINE公式アカウント(企業と顧客がLINEを使ってダイレクトにコミュニケーションできる媒介型サービス)へと刷新し,それを用いた飲食店のクーポン配布ができるようにした。IOであるマクドナルドやスタバも,販売機会拡大を目的として,これらPFに補完者として選択的に参加し,クーポンを配布している。

もっとも,媒介型PFへの過度の依存は,顧客接点をPFに奪われたり,コスト的に見合わなかったりするという判断から,IOはPFに依存しない集客も行う。実際日本マクドナルドは2015年4月にマクドナルド公式アプリを刷新し,紙のクーポンをやめてバーチャルクーポンの提供を開始した6)。マクドナルドの場合は,PFのクーポンサービスにも積極的に参加している。これは同社がマスマーケティングを志向しているので,PF活用を主にコストパフォーマンスで判断しているからだと考えられる7)。スタバの場合は,One to Oneマーケティング志向があり,より積極的に自社アプリの機能拡張を続けている。

このように部分的にPFと補完者という関係を維持しつつも,それぞれが別々に顧客接点機能を発展させている取り組みが,飲食店業界における集客(クーポン)機能以外の顧客接点機能においても確認できる(表1)。次節では,このような現象の中から,IOであるスタバと媒介型PFであるLINEの機能拡張競争の事例を詳細に分析する。なお,ここで「競争」とは,当事者に競争している意識があるかどうかとは関係なく,現象として観察できる相互作用を指している。

表1

マーケティング機能(顧客接点機能)をめぐる個別事業者と媒介型PFの機能拡張の例

出典:筆者作成。

2. スターバックスとLINEの機能拡張競争

(1) スターバックスの顧客接点強化の取り組み

まず,スタバの顧客接点機能に関する取り組み状況について概観しておく。これまで同社は一貫して,顧客接点のデジタル化に力を入れてきた。日本国内では,2002年10月に公式Webサイトや自社発行のICカードである「スターバックスカード」(プリペイドカード)を導入した。その後2013年にはオンラインストアを開設し,店舗で商品と交換可能な電子チケットの「Starbucks eTicket」の提供を開始した(2013年6月)。2014年2月には,モバイル決済を可能とする「モバイルスターバックスカード」を導入,さらに2016年5月に公式モバイルアプリを導入した8)

また,同社では,2017年の9月に顧客の体験価値を向上させるための取り組みであるロイヤルティプログラムである「Starbucks Rewards」を導入した。これにより,顧客は自社サイトや公式アプリに登録したスターバックスカードで商品を購入することで,「Star(スター)」というポイントを貯めたり,新商品の先行購入や限定イベントへの招待を受けたりすることができるようになった9)

他にも,近年スタバは事前オーダーサービスの拡充に力を入れている。同社では事前に公式モバイルアプリで注文した商品を,店舗でレジに並ばずに受け取ることができる「Mobile Order & Pay」サービスを提供している(国内は2019年6月から)。そこでは,商品の注文以外にカスタマイズや決済など,受け取り以外のプロセスがオンラインで完了できる。

こうした顧客接点の機能強化にIOとして注力するスタバであるが,その一方で日本では媒介型PFにも参加することで顧客接点機能を強化している。次項においては,IOとしてのスタバの取り組みと,同社が補完者として参加するLINEの取り組みとの相互作用的発展を事例分析する。

(2) 顧客接点機能をめぐるスターバックスとLINEとの取り組み

スタバは自社で顧客接点の強化に取り組む一方,PFであるLINEへの参加と同社との協業も行っている。両者は2015年4月からLINEの「友だち」にギフトをプレゼントできる「LINEギフト」サービスを実施したり,期間限定の公式LINEアカウントを設置したりすることで,本格的な協業を模索してきた10)。その動きが先鋭化したのが,2018年12月に両者の間で締結された包括的業務提携である。スタバでは元々,自社独自のサービスだけで運用していくことに固執するのではなく,個別にPFの活用を検討していた。他にも存在する複数PFの中でLINEの活用にスタバが注力することにしたのは,LINEの持つリーチの広さを活用できることと,LINEの持つメッセージ機能が,「人と人との繋がり」を重視するスタバの基本的方針と合致したからである11)。また,スタバのブランドイメージを保持することと,消費者と狙い通りのコミュニケーションを取るためにチャネルを限定するという意図もあった12)

2019年4月には,(1)LINE上で発行される「LINEスターバックスカード」の開始,(2)スタバのLINE公式アカウントの開設とそれを用いた消費者とのOne to Oneコミュニケーションの実現,(3)LINE Pay(2017年1月開始)の店舗への導入,の三点を重点的に進めていくことが発表された13)。中でも両者の特徴的な相互関係が見られるのが,(1)と(2)である。元々スタバは,決済に使用できるプリペイドカードである「スターバックスカード」(2002年~)を発行し,モバイル上での「モバイルスターバックスカード」(2014年~)も提供していた。LINEスターバックスカードはそれらと同様に,現金あるいはクレジットカード,LINE Payなどでチャージすることで店舗での支払に使え,スタバのポイント「Star」を貯めることも,クーポンを入手することもできる(ただし,スタバの会員プログラム「My Starbucks」未加入の場合はStarbucks eTicketを得ることはできない)。My Starbucksの既存会員は,LINE側でカードを登録すると,それと既存のスターバックスカード情報とを紐付けることができ,My Starbucksで両方のスターバックスカードにチャージ済みの残高を管理できる。

スタバは従来,TwitterやFacebook,InstagramといったSNSには公式アカウントを設置してきたが,LINE公式アカウントは期間限定での開設であった。スタバでは,顧客とのOne to Oneコミュニケーションをより進めるために,2019年からLINE公式アカウントを継続開設することとし,今後も機能拡充を目指しているとされる。

(3) スターバックスによるLINE利用の選択とLINEによる機能の取り込み

こうした動きの中に,LINEというPFに補完者として参加したスタバが,全ての顧客接点機能をLINEに依存しているわけではないことが確認できる。例えば,スタバの自社モバイルアプリでもLINE公式アカウントでも,クーポンの入手や決済を行うことは可能である。「おすすめの商品」や「ギフトを贈る」などの機能は双方に備わっている。しかし一方で,事前オーダーや,「Starbucks Rewards」で貯めたポイントを店舗で商品と交換可能な「Starbucks eTicket」の入手には,スタバの自社モバイルアプリが必要となる。また,LINE経由ではなく,自社アプリで入手できるクーポンには,ドリンクの有料カスタムを無料にする「カスタマイズチケット」という有料カスタムのトライを促す機能もあり,表層的には同じクーポン機能の中でも棲み分けを図っている14)

プリペイドカード機能の提供(スターバックスカード)がLINEスターバックスカードだけでなく,自社独自のプラスチックカードや自社アプリ機能によるプリペイドカードもあることに着目したい。スターバックスカードによるキャッシュレス決済は,米国においてはApple Payと同水準の普及率を持っていたこともある15)。こういった米国での高い普及率を背景として,スタバは,PFであるLINEにプリペイド型の決済機能を全て委ねる気はないものと考えられる。実際,同社は自社独自決済を行う理由として,顧客データの直接取得をあげている16)。同様の理由から,ポイントサービスもPFが提供する共通ポイントは導入していない。

一方で,LINEもまた,補完者であるスタバに単にPF機能を提供しているわけではない。LINEはまず,スタバとの取り組みによって,LINE Payの利用促進をはかる。また,スタバの公式アカウントでは,LINEスターバックスカードでの購買データに基づくキャンペーンなどの告知やパーソナライズ化したメッセージの送信がなされる。ここでLINEが独自に集客しているのは,スタバの独自サービスであるMy Starbucksへの登録にハードルを感じる,あるいはその存在に気づいていなかったスタバのライトユーザーである。また,LINE側としては,スタバのような,幅広い顧客層に関するレコメンデーション,決済までの流れのデジタル化に取り組んでいる企業と提携することで,同種の業界・企業へと横展開可能なサービス開発へと結びつけ,事業拡大を図っていると考えられる17)

以上で見た通り,IOとしてのスタバと,PFとしてのLINEは,協業して相互に活動する一方で,それぞれ個別に機能強化にも取り組んでいる。また,協業の一方で,顧客コミュニケーションや決済などの顧客接点をめぐっては一部競争関係にもあるため,お互いの機能をどう併用させるかに関する駆け引きがなされているのである。

スタバとLINEの事例分析の要点を整理すると図2の通りとなる。IO(補完者)であるスタバは顧客接点をPFに奪われないために,PFの動きを参照しつつも,独自に機能強化を図っている。また,PFであるLINEに参加する際にも,顧客接点機能を全てLINEに委ねる選択はしていない。一方で,LINEはIOであるスタバの提供機能を取り込むことで,例えばLINE Payの決済利用者や補完者のライトユーザーへの販促や顧客情報収集などを強化している。

図2

スターバックスとLINEの相互発展状況

出典:筆者作成。

IV. ディスカッション

1. 事例分析の総括と解釈

本稿の事例分析の主要な発見事実は以下の二点である。第一に,飲食店業界の顧客接点機能をめぐって,補完者(個別事業者(IO))とPFの間に,どういう機能を実装するかについての競争が存在している。そこでは,IOが機能毎に選択的にPFを活用しながら,あるいは相互に機能発展を参照しながら,それぞれが顧客接点のための提供機能を発展させる取り組みが行われている。

第二に,PFとIO(補完者)の顧客接点機能の内容は,それぞれ力点が異なる。本稿では顧客接点機能強化の目標を,「潜在顧客へのリーチ拡大,新規顧客獲得,顧客維持率向上,利用頻度向上,顧客単価向上」と考えている。これらの目標は,本稿事例では,以下のように役割分担されていると理解できる。

飲食店業界においては,PFは,特に潜在顧客へのリーチ拡大,新規顧客獲得のための取り組みに力点を置いていると考えられる。これらは,PFとしてのネットワーク効果が発揮しやすい機能である。スタバとLINEとの取り組みで観察できるのは,LINEはスタバに頻繁に通う既存顧客ではなく,ライトユーザー(潜在顧客や新規顧客)をターゲットにしていたということである。

一方で,IOが力を入れるのは,既存顧客の顧客維持率向上,利用頻度向上,顧客単価向上である。例えば,スタバは,これらの目的のために,既存顧客の利便性アップと個別の購買行動データ取得を意識して,「Starbucks Rewards」,「Mobile Order & Pay」や独自の電子マネー決済「スターバックスカード」を開発・実装している。

もっとも,上記の解釈は,PFあるいはIO(補完者でもある)が,新規顧客か既存顧客のいずれかにのみ注力するということは意味しない。PFは,顧客接点機能を,個別事業者をまたがって共通化することで,消費者とIOとの間に入り,その利用率を高め,結果としてIOのPF依存を高めようとする。しかし,IOもPFに顧客接点をすべて奪われまいと,独自モバイルアプリなどでPFの機能を自社に取り込み,顧客接点機能を自社化することで,消費者の直接的囲い込みを図ることがある。

2. 媒介型PFと個別事業者の相互作用的進化のモデルと一般化仮説

本稿のRQは,媒介型PFとIOのマーケティング機能(顧客接点機能)の相互作用的進化の具体的内容とそのメカニズムを問うものである。事例分析と上述の解釈に基づき,この相互作用的進化は以下の通りモデル化できる。まず,媒介型PFは,そもそもIOが保有していた顧客接点に関連するマーケティング機能を取り込み,PFサービスをIOに提供する。本稿では,III章1節の「飲食店業界におけるマクロ的観察」で確認したように,媒介型PFはIOをまたがる共通機能として提供できるサービスを開発することでIOを取り込もうとする。

そしてPF機能がIOに対して提供されると,IOは自社の広義のCRM戦略に合致するPF機能を選択し,それに参加(利用)する。しかし,一方で,IOは顧客接点を全てPFに奪われないように,機能の自社化を図ったり,PF機能と自社独自の顧客接点機能との棲み分けを図ったりすることで,顧客接点を奪い返そうとすることがある。一方PFは,IOをまたがるネットワーク効果によって,また消費者の行動データを,IOをまたがって蓄積して,IOのPFへの依存度を高めて囲い込みを図る。

このように,媒介型PFとIOの顧客接点機能は相互作用的に進化していく。このメカニズムは,図3の「媒介型PFと個別事業者の相互作用的進化のモデル」において,PF機能をめぐる,PF側の「機能を取り込み開発・提供」「共通化と消費者行動データの蓄積で個別事業者を囲い込み」,IO側の「選択・参加」「PF機能と自社機能の棲み分け」「社内プロセス化(実装)」として表現できる。このメカニズムは,上述の事例分析に基づいて,以下の一般化仮説として命題化できる。

図3

媒介型PFと個別事業者の相互作用的進化のモデル

出典:筆者作成。

仮説1:媒介型プラットフォームと個別事業者のマーケティング機能(顧客接点機能)は,相互的機能拡張競争によって発展する。

仮説1-1:媒介型プラットフォームは,個別事業者の顧客接点機能を取り込み,個別事業者をまたがる共通化を行うことで発展する。

仮説1-2:個別事業者は媒介型プラットフォームに機能ごとに選択的に参加すると同時に,顧客接点を全てプラットフォームに奪われないように,自社の社内プロセスとして独自機能を開発・実装することがある。

3の中央部分は,本稿の事例に見られた,IOと媒介型PFの「協業的相互作用」である。協業の当事者であるIO(例:スタバ)は,PFのネットワーク効果を活用するために,PFとの協業的機能開発に応じたり働きかけることがある。一方,PFは,協業的に開発されたPF機能を他のIOに横展開していくことによってPF機能をさらに進化させていく。例えば,LINEには,スタバとの協業の成果を活かし,さらに機能追加したサービスとして,東急「どこ渋」モバイルオーダー(2021年1月開始)がある。このサービスでは,東急不動産のテナントである渋谷ヒカリエの店舗等を対象に,LINEから注文と決済ができるだけでなく,クーポンを発行したり,LINEミニアプリを会員証として活用したりすることで,実店舗での購買結果を踏まえて,LINE公式アカウントを通じて再購買を促進することなどができる。

この「協業的開発・横展開」メカニズムは,以下のように命題化できる。

仮説2:個別事業者は媒介型プラットフォームのネットワーク効果を活用するために,協業的にプラットフォーム機能の開発を行うことがある。プラットフォームは,そうして開発した新機能を他の個別事業者・他業界に横展開する。

この相互作用は一度限りではなく,何度も繰り返されるものと考えられる。

V. 結語

本稿で導出したモデルと仮説は,まずは事例分析の対象である飲食店業界を前提としたB2Cビジネスにおける顧客接点を代替あるいは提供する媒介型PFに関わるものである。しかし,本モデルと仮説が一般化の範囲として想定しているのは,媒介型PFの部分である「ネット以前から存在していたIOのビジネス機能の一部を分離して,企業をまたがって横断的に提供するPFとIOの関係におけるマーケティング機能の相互的発展一般」である。例えば,本稿で提案したモデル・仮説は,小売業界の決済・ポイント機能などを巡る,IOと媒介型PFの相互作用などにも適用できる可能性があるだろう。具体的には,ファミリーマートの独自サービス「ファミペイ」とT-POINTやdポイントなどのPFとの関係について,本稿のモデル・仮説が当てはまると考えられる。

本稿の命題は,IOがPFに対抗するための実務的インプリケーションを持つ。ただし,デジタルな手法で顧客接点機能を内部化できるのは,現状では一部の有力企業(大規模チェーン)だけだろう。現状では,広告,決済,デリバリーといったプロセスにおけるPFへの依存は,小規模なIOにとっては一方的に拡大している状況にある。また,大規模チェーンを持つIOがPFの持つ顧客接点機能を自社プロセスに内部化したとしても,PFの有するネットワーク効果やコスト優位と同等のものを築くのは難しいこともあり,すべての顧客接点でPFと同等な力を持つことは困難である。ただし,有力なIOが機能拡張をはかることは,PFの市場独占への一定の拮抗力にはなりえる。また,IOの機能拡張を助ける,バックヤード業者としてのシステム事業者の発展の動き(例:電子マネーやデリバリー機能を自社アプリに組み込むためのSaaS)は,独自機能を実装できるIOの範囲を拡大するだろう。さらに,実務的課題としては,IOがPF機能と自社機能を,どのような条件下で使い分けすべきかといった,PF依存の選択基準問題なども解明する必要がある。

最後に本稿の学術的意義に関して再考しておきたい。本稿のRQに対応するモデルと仮説は,マーケティング機能,特に顧客接点機能に関する媒介型PFとIOの間の相互発展の分析に留まっている。しかし,この研究の問題意識は,学術的にはツーサイドPF論を暗黙の前提にしている既存研究と異なる理論的パースペクティブを示すことであった。本稿で示唆した新しいパースペクティブは,PFを中心に据えた補完者の管理と補完者側からの対応ではなく,PFとIOを対等の当事者として設定して,両者の間でどのように相互作用的進化が起きているのかに着目するものである。本稿は,飲食店業界に関する事例研究であったが,マーケティング機能に関するPFとIOの相互作用は,サービス業界や製造業等にも及ぶと考えている。したがって,問題意識の深化のために,まずマーケティング機能に関して,他業界の調査を通じた仮説の確認や拡張が必要だと考えている。さらに,マーケティング機能ほど顕著な現象ではないとはいえ,調達や求人機能などの他機能にも同様な相互作用がありえる。

対象業界と着目機能の拡張によって,本稿が提示する「PFとIOの相互作用的進化のパースペクティブ」を,プラットフォーム理論における新たな視角として確立しえると考えるものである。

謝辞

本研究はJSPS科研費(基盤研究(B)19H01534,若手研究18K12867)からの支援を受けて行われました。

1)  本稿での議論は,経営学における「共進化」論(Volberda & Lewin, 2003)の一種ともいえる。ただし,共進化論は,サプライチェーン上の取引企業間(例:部品企業と組み立てメーカーの相互作用)や競合企業間(競争ダイナミクス(Chen & Miller, 2012))について主に議論されてきた歴史があり,本稿が取り上げるPFとIOの相互作用的進化を対象にするものではない。本稿が分析の対象とする「顧客接点の奪い合い」の時系列的発展は,媒介型PFとIOの間に特有のものであり,その点で従来の共進化に関する議論とは異なる。

2)  インタビューは,以下の2名の各企業のマーケティング部門の幹部またはその経験者(匿名)に対して行った。(1)スターバックス コーヒー ジャパン株式会社A氏(2019年11月21日),(2)日本マクドナルド株式会社B氏(幹部経験者)(2019年11月23日)。

7)  日本マクドナルド株式会社B氏インタビューより。

9)  「スターバックスが提供するシームレスな“感動体験”」(スターバックス コーヒー ジャパン CRM部長 清水省吾氏 講演(2020年1月28日,マーケティング・テクノロジーフェア東京2020))

Starbucks Coffee Japan(2017)

11)  スターバックス コーヒー ジャパン株式会社A氏インタビューより。

12)  注11に同じ。

14)  注11に同じ。

16)  注11に同じ。

根来 龍之(ねごろ たつゆき)

早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

京都大学文学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼メーカー,文教大学などを経て,現職。英ハル大学客員研究員,米カリフォルニア大学客員研究員,経営情報学会会長などを歴任。専門は,プラットフォーム戦略論,ビジネスモデル論,デジタル戦略。

足代 訓史(あじろ さとし)

拓殖大学商学部准教授

早稲田大学商学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。株式会社日本総合研究所研究員,早稲田大学商学学術院助教,ブリティッシュコロンビア大学客員准教授などを経て,現職。専門は,競争戦略とイノベーション,アントレプレナーシップ。

References
 
© 2021 The Author(s).
feedback
Top