デザインの名を冠した様々概念が発散し注目を集める中で,デザインという言葉の多義性が理解の混乱を招く恐れがある。日本ではデザインに対する一般的な理解は「意匠」という狭い定義に留まる一方,デザイン研究において拡張された定義が定着しないため,「デザイン経営」の概念に対して違和感や認識の齟齬が生じる。したがって,本研究の目的は,経営の文脈で多義的に使われるデザイン概念を概観し整理したうえで,デザイン経営研究の課題を提示することにある。具体的には,既存研究におけるデザイン概念の拡張を時系列に確認し,その多義的な概念を,成果物としてのデザインとプロセスとしてのデザインとを両極とする連続体上に位置づけ,整理する。定義を明確にすることにより,デザイン経営研究の範囲と成果の測定について検討し,将来の研究課題を提示する。