2023 年 42 巻 4 号 p. 51-57
対象に対する個人の所有感覚である個人的心理的所有感という概念は,2000年代初期に組織論の文脈において提唱されて以降,製品に対する購買意図や支払い意思額の向上などのマーケティング成果をもたらすために,マーケティング研究に盛んに応用されてきた。さらに,この概念に加えて,対象に対する集団の所有感覚である集団的心理的所有感という概念が提唱されており,組織の効率性などの組織成果に関して,個人的心理的所有感とは異なる帰結をもたらす可能性が指摘されている。それにもかかわらず,マーケティング領域にこの概念を応用することを試みた研究はほとんど存在しない。本稿は,個人的心理的所有感と集団的心理的所有感に関する研究をレビューし,後者の概念の,消費者コミュニティや経験消費などのマーケティング研究への応用可能性を検討する。