マーケティングジャーナル
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特集論文 / 招待査読論文
孤独なEコマース利用者の顧客経験(CX)にアバターが及ぼす影響
西井 真祐子
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J-STAGE Data 電子付録

2025 年 45 巻 2 号 p. 124-131

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抄録

小売り環境において顧客経験(CX)を向上させる重要な要素の一つは,販売員の存在である。Eコマース環境では通常,人間の販売員は不在であり,代わりにアバターのようなアシスタントが存在する場合がある。先行研究では,オンライン・ショッピング・サイトなどのオンライン環境において,擬人化されたアバターが消費者の購買意欲や製品に対する態度を向上させることが示唆されている。しかしながら,アバターの存在がEコマース・サイトを訪れて行われる購買プロセス全体を通じて,顧客経験の満足にどのような影響を与えるのかについては明らかになっていない。先行研究では,アバターがオンラインでの体験において介入感を消費者に与え,ネガティブな反応を得ることが示されている。したがって,購買状況や消費者の個人的な特性によって,アバターの存在が有益である場合とそうではない場合が想定される。本研究では,架空のオンライン・ショッピング・サイトで模擬的な顧客経験を行う2つの実験を実施した。その結果,アバターの存在に対する評価は購買プロセスの段階によって異なる可能性が示された。さらに,消費者の孤独感が高い場合,アバターの出現頻度が高い方が顧客経験の満足度が向上する一方で,孤独感の低い消費者では,アバターの出現頻度が低い方が顧客経験の満足度が高くなることが明らかになった。本研究の知見は,Eコマース・サイトでの顧客経験の満足度を高める顧客経験の設計に役立つものである。

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© 2025 The Author(s).

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