今回の特集号に掲載された4本の論文は,ウェルビーイングとマーケティングとの間の結びつきが,決して単線的ではなく一筋縄では捉えきれないことを,それぞれの理論的立場から浮き彫りにしている。制度・市場・文化が交錯する中での社会的善の調停と再構築,価値観と行動の乖離が示すサステナビリティの難しさ,成長前提のマーケティング観そのものへの再考,ブランド経験を通じた主観的幸福の実現の途,これらはいずれも,ウェルビーイングが,多様な要素が複層的に交絡する中で,個々の実践や選択の連なりの先に次第に構築されていくものであることを示唆している。研究者と実務家が,それぞれに探求と創発を積み重ね,相互に呼応しながら継走していくことで,ウェルビーイングの実現に向けたマーケティングの理論や実践はさらに厚みを増していくはずである。本特集号掲載の論文は,このような次なる探求と創発へと襷を手渡そうとしている。本特集号を起点として,ウェルビーイングの実現に向けた継走が生まれ,続いていくことを期待したい。貴重な論考をご寄稿いただいた著者の先生方と,細部に至るまで本特集号の編集を支え,知の継走を下支えいただいている事務局に,この場をお借りして御礼申し上げる。