「実は,アニメ聖地は公認されていないことが多く,それを探し当てようとするのがコアなオタクで,探し当てられた聖地に行くにわかオタとはやっぱり地位が全然違うんですよ」と言う学部ゼミ生たち5人と一緒に,学園祭の出し物としてアニメ聖地巡礼の調査報告を行ったのは,ひと昔前のこと。その結果をまとめた英文論文は,ツーリズムの国際ジャーナルに掲載していただけた。
そんな論文を読んで面白がって,ひとりの優秀な海外研究者が,私の大学に留学しにきてくれた。そんな彼が,今回の特集号の筆頭論文の筆頭著者だ。この論文は,私が彼につぶやいた「中国人旅行者が日本で行列するラーメン屋は現地中国人が行列するラーメン屋と違うよね」という会話から生まれた。
その他の4篇もごく素朴なキッカケから生まれた論文だ。「日本円が弱くなって,外国人旅行者向けの高価格設定を見かけるようになったけど,ちゃんと効くのかな」,「著者の出身地に“瀬戸内のハワイ”と呼ばれる観光地があるけど,“日本のハワイ”や“東洋のハワイ”といった強気の看板を背負う観光地もあるけど,どれが効果的なんだろうね」,「極東の技術大国とおもてなし国,どちらのカントリーイメージが遠い異国からの旅行者に刺さっているのかな」,「海外旅行者の激増で,観光業者に対する国内旅行者の満足度は下がったんだろうか」といった具合である。
日本の観光業界がグローバル化を遂げた今,挑戦に値する新たな課題が次々と姿を現しつつあるのである。
ところで,今回は,日本語を解せない著者と読者のために,巻頭言も含めて全編英文化した。日本語読者諸氏には,電子付録の和訳版をお読みいただくか,英文原文をAI翻訳に掛けてお読みいただければ幸いである。急速なグローバル化に頑張って対応している観光業界に負けまいと,本誌もグローバル化を推進していきたい。