抄録
本研究は,社会的比較理論を基本におきながら,ソーシャルメディア・インフルエンサーと視聴者との1対多数のパラソーシャルな関係が,製品態度や推奨意向に与える影響について検証したものである。YouTubeにおけるビューティー・ファッション系のソーシャルメディア・インフルエンサーを対象に,インフルエンサーの信憑性と,消費者の心理的側面である羨みが,パラソーシャルな関係性を通じて,製品態度と推奨意向にどのように影響するのかを構造方程式モデルで検証した。120サンプルの回答データを分析した結果,インフルエンサーの信憑性(信頼性・専門性・社会的魅力・身体的魅力・同一性)の構成要素の妥当性が確認され,インフルエンサーの信憑性や羨みが消費者とのパラソーシャル関係を高めながら,製品態度や推奨意向に正の影響を与えることが明らかになった。特に,信憑性の信頼性,社会的魅力,同一性などの要素がパラソーシャル関係に強い影響を与えていた。本研究の貢献は,社会比較理論に焦点を当てながら,インフルエンサーと消費者のパラソーシャル関係を包括モデルとして設計し,製品態度や推奨意向に与える影響を明らかにした点である。