抄録
本研究の目的は,長い年月を経ても一貫性を保ちうる製品デザインを組み込んだ製品開発プロセスについての理解である。ブランドの長期的な存続には,ブランドの一貫性の維持と市場環境に継続的に適応するための革新の必要性が指摘されているが,それが可能となる製品デザインを組み込んだ開発プロセスについて理解が不足している。そこで,ロングセラー・ブランド化や普遍的なデザインに関する先行研究レビューを行った上で,同一企業による 2つのロングセラー・ブランドの開発過程について分析した。事例分析の結果,共通する重要なプロセスが,1. 研究,2. 洞察,3.本質化,4. 探索,5. 開発,6. 普遍化,7. 普及,8. 拡張の8つにまとめられた。特に,開発プロセスでの本質化と普遍化が満たされることで,維持と革新に適した製品デザインとなることが示された。