2023 年 4 巻 1 号 p. 42-50
近年,医療に携わる製造業が手術用途に合わせた医療材料のキット化やそれに伴う競合他社との協業関係の構築,手術室の物流および情報管理など,自社をプラットフォームとして生産体制と供給体制をシームレスに繋げようとする動きが活発である。本研究では,医療に携わる製造業がビジネス・エコシステムを構築し,「製造業のサービス化」による新たな価値創出の可能性について検討した。医療機器および医療材料企業84社を対象に価値創出の状況を確認した結果,伝統的なバリューチェーンモデルに基づき,顧客に対し「製品価値」を中心とした価値提供を行っていることが示された。さらに,製品とサービスの一体化の状況を検討すべく,サービタイゼーション誘因モデルによる検証を行い,「サービタイゼーション」につながる「カスタマイズソリューション」および「ビジネスプロセスの統合」に企業が対応できていない構造的空隙があることを確認した。最後に,ビジネス・エコシステムを構築するためには,顧客との情報流を活性化させ,サービタイゼーションを促進する構造的空隙を架橋する戦略を提案した。