2024 年 5 巻 1 号 p. 11-20
本論文の目的は,Kohli and Jaworski(1990)に代表される,組織の市場志向性を行動的側面から捉える研究を起点とし,日本企業における組織の構造的特性が市場志向行動に与える影響を明らかにすることである。本論では特に,マーケティング戦略のマネジメントに深く関係する,マーケティング意思決定の影響力の集権性,戦略作成の公式化,部門間のタスク・コンフリクトに関して,市場志向行動に影響を与える先行要因として着目する。市場志向行動のプロセスを,市場情報の生成と普及,反応とに細分化した上で,それらと先行要因の組み合わせがどのように影響を及ぼし合うのか,日本の製造業におけるマーケティング担当者に対するサーベイ調査を基に,構造方程式モデリングによる実証的解明を試みた。結果として,①市場志向行動プロセスは,シームレスなプロセスとしては成り立っていないこと,②市場志向行動全ての要素を向上させる最適な組織構造の設計は困難であり,状況に応じた組織構造の調整が必要であることが明らかとなった。