抄録
国立国語研究所と統計数理研究所は,山形県鶴岡市で共通語化の大規模な経年調査を1950年から実施している.そのデータのうち,成人の同一話者を約20年間隔で41年間にわたって追跡した経年調査データに着目し,時間経過とともに音韻とアクセントの共通語化がどの程度進むのかを統計的に検討した.その結果,アクセントについては調査年の効果に有意差がみられ,言語形成期を過ぎた成人でも年齢を重ねるにつれて共通語化が進行することが明らかになった.このことから,「言語形成期に習得した言語体系が現在の言語使用に反映されている」という仮定は,アクセントの共通語化については支持されないと考えられる.一方,音韻については調査年の効果に有意差はなかった.音韻の共通語化に関しては,言語形成期に習得した言語体系が現在の言語使用に反映されていると言える.