計量国語学
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特集論文B
宇野浩二の病気前後の文体変化に関する計量的分析
劉 雪琴金 明哲
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2017 年 31 巻 2 号 p. 128-143

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抄録
本稿では,宇野浩二の病気前後の作品を対象とし,漢字・仮名の使用率,語彙量,形態素の使用率,タグのn-gram(n=1,2),文節パターン,読点の打ち方の文体特徴量について,対応分析,統計的仮説検定の方法を用いて分析を行った.その結果,宇野浩二の病気前後の作品にはいくつかの異なる特徴があることを明らかにした.病後の作品では,漢字の使用率が増加し,語彙がやや豊富になったが,これは名詞の使用率の増加が主な原因であることがわかった.名詞の増加によって,文体が口語体からフォーマルな書き言葉になり,読点の多用が饒舌さと流暢さの喪失に影響を与えているとの所見が得られた.これらが,宇野浩二の病後の文体が変化したという印象を読者に与えた主な原因であると考えられる.また,病前に書いた「日曜日」という作品が病後の作品と類似した特徴を示していることから,入院する前に宇野浩二の文体は既に変化し始めていた可能性があることが示唆される.
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© 2017 計量国語学会

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