抄録
現代のランダムサンプリング法による言語調査は,以下の6つの問題に直面しているものと思われる:(1)住民基本台帳閲覧の問題,(2)拒否による信頼性の問題,(3)手間・費用・人材の問題,(4)調査会社への依頼による信頼性の問題,(5)生え抜き話者の問題,(6)言語的分析の問題.それぞれの問題について解説と,考えうる対策を論じた.とりわけ,言語的分析に関する問題では,ランダムサンプリング法以外の調査方法論による結果と併用することで,各々の調査法の欠陥を埋め合わせて真実に接近しうることを述べ,複数調査法を組み合わせた国内外の調査実例を紹介した.