計量国語学
Online ISSN : 2433-0302
Print ISSN : 0453-4611
31 巻, 5 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文B
  • 陳 秀茵
    原稿種別: 論文B
    2018 年 31 巻 5 号 p. 323-337
    発行日: 2018/06/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は話し言葉における「ことになる」の文の使用実態を明らかにしたものである.話し言葉において,「そんなにたくさんお酒を飲むと,あした頭痛に苦しむことになるよ」のような「事実の展開」用法が最も多く使われていることがわかった.さらに,「ことになる」の前接形式と後接形式にも特徴が見られた.前接形式では「という」が多く現れ,特に「国会会議録」では70%近くを占めている.そのような「ということになる」は政治家が話す内容のポイントを際立たせ,「つなぎ」の機能を持っている.それに対し,後接形式では「わけだ」が多く現れたが,現れる場所の違いにより,機能も異なってくる.具体的に言えば,文末に現れる場合には論理的帰結を表している「ことになる」は「結果」を表す「わけだ」と親和性があり,ひとまとまりとして「帰結」を表す.文中に現れる「ことになるわけだが」形式の「わけだが」は「ことになる」の意味用法と関係なく,「事実の提示」を表す.
  • 浅石 卓真
    原稿種別: 論文B
    2018 年 31 巻 5 号 p. 338-351
    発行日: 2018/06/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では,中学・高校の理科教科書を対象として,テキスト中での専門用語の出現過程を記述的に明らかにする.そのために,15点の理科教科書の本文をテキストデータ化した上で,索引語が本文の冒頭から終わりにかけてどのように出現していくかを分析した.多くの教科書に共通する特徴は以下の通りである.(1)教科書を読み進めていく過程で,初出の専門用語はコンスタントに出現していくが,相対的に多く出現する部分やあまり出現しない部分もある.(2)「少数の専門用語が頻繁に繰り返される一方で,多くの専門用語は殆ど繰り返されない」という出現頻度の偏りが強まっていく.ただし,一部の専門用語が突出して繰り返される部分も存在する.いずれの教科書も専門用語をランダムに出現させた場合とは推移が明らかに異なり,分野・学年・時代ごとの特徴も観察された.
  • 宮城 信, 今田 水穂
    原稿種別: 論文B
    2018 年 31 巻 5 号 p. 352-369
    発行日: 2018/06/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    『児童・生徒作文コーパス』を用いて,児童・生徒の作文における漢字の使用状況の調査と漢字使用能力の推定を試みる.このコーパスは小学校1年生から中学校3年生までの児童・生徒の作文を収集,電子化した100万語規模のコーパスで,児童・生徒の言語使用状況を学年横断的に調査することができる.このコーパスを用いて,漢字種別(学年別配当漢字,常用漢字,常用外漢字),品詞,語種等の観点から,児童・生徒の学年別の漢字使用状況を調査する.また,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』や,別途収集した大学生の書いた作文と対照することによって,作文の文体的特徴や大学生の漢字使用状況を到達目標とした児童・生徒の書くことにおける漢字使用能力の発達過程の分析を行う.
書評
解説
  • 松田 謙次郎
    原稿種別: 解説
    2018 年 31 巻 5 号 p. 373-390
    発行日: 2018/06/20
    公開日: 2019/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    現代のランダムサンプリング法による言語調査は,以下の6つの問題に直面しているものと思われる:(1)住民基本台帳閲覧の問題,(2)拒否による信頼性の問題,(3)手間・費用・人材の問題,(4)調査会社への依頼による信頼性の問題,(5)生え抜き話者の問題,(6)言語的分析の問題.それぞれの問題について解説と,考えうる対策を論じた.とりわけ,言語的分析に関する問題では,ランダムサンプリング法以外の調査方法論による結果と併用することで,各々の調査法の欠陥を埋め合わせて真実に接近しうることを述べ,複数調査法を組み合わせた国内外の調査実例を紹介した.
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