抄録
日本語教育は,言語,教育,社会にまたがる研究テーマを扱う領域である.このことは,過去40年間の日本語教育の歩みからも確認できる.日本語教育における様々な研究課題に対して,計量言語学の頻度分析モデルがどのような事実を明らかにするのか,具体事例に基づいて考える.とりわけ,3点の事実を明らかにする.1) 母語話者データの大規模コーパスの調査分析に基づく研究は,言語と教育にまたがる日本語教育の課題を解決する可能性があること,2) 学習者コーパスの調査分析に基づく研究は,教育における日本語教育の課題,とりわけ第二言語習得における課題を解決する可能性があること,3) 小規模の自作コーパスの調査分析に基づく研究は,社会における日本語教育の課題を解決する上で,有効であることを示す.