抄録
本研究は,「ね」の複合形式である「そうなんですね」「んですかね」の分析をもとに,近年の「ね」の伝達的機能の記述を試みた.具体的には,公開(収録)時の異なる複数の会話コーパスを用いた両複合形式の使用割合を比較した.分析の結果,2000年代に比べ,2010年代に公開されたコーパスでは①情報受容場面において「そうなんですね」の使用が「そうなんですか」を上回っていること,②質問場面における「んですかね」の使用が微増していることが明らかとなった.これらの結果から,近年における「ね」の伝達的機能を「聞き手と会話を維持する意図があることを聞き手に明示する」と規定した.そして,「ね」が選好されるのは,「会話継続」の意思を表明し,相手と円滑な人間関係の構築を目指そうという,語用論的動機付けによるものと結論付けた.