抄録
児童作文を用いて,24種類の語彙多様性指標の信頼性を調べた.語彙多様性指標は延べ語数と無相関であることが望ましいが,児童作文の場合は著者の作文能力に応じて語彙多様性と延べ語数の間に相関が見られるため,集団全体で指標値と延べ語数が無相関であることは指標の信頼性の根拠にならない.そのため,同一作文中において累積的に指標値を測定し,その変動の小ささをLMMで評価した.また,指標値の分布の形状を指定するパラメータを用いる3種類の指標について,LMMでパラメータを決定する補正を試みた.この結果,Simpson指数,実測的手法,LMMで補正した指標で比較的よい結果が得られた.これらの指標について著者の学年,および教員による作文評価(語彙評価)との関係を調べ,学年が上がるほど語彙多様性が増大すること,教員の評価において語彙多様性はそれほど重視されていないことを確認した.